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「ごほうびがないとオスワリしない」の解決法|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.91

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は犬のあるあるネタ「ごほうびを持っているとオスワリをするけど、ないとしない」にスポットを当てます。なぜ持っていないことがバレてしまうのか、バレないようにするにはどうしたらいいか、最終的にごほうびを持っていなくてもオスワリするようになるコツもわかりますよ(編集部)。

離れたところにいる犬を、自分の元へ来させようとして「オイデ」と声をかける。
フードを手にしていると来るけど、手にしていなければ来ない。
あるいは、オスワリを教え始めた段階で、フードがあればできるけどフードがないとできない。
要は、フードを手にしていないと犬に無視される。
これ、昔からインストラクターの仲間内では「フードの切れ目が縁の切れ目」と称しています。
トレーニングが少し進んでくると、「フードはいつまで必要なのです?」「フードがなくてもいつかできるようになるのですか?」といった、質問もよく受けます。
「フードの切れ目が縁の切れ目」にならないためには、フードを使ったトレーニングの注意点と、フードそのものの役割、そしてトレーニングの正しい進め方を知ること、それが欠かせません。
ということで、今回はそんなお話を。

フードを持ったことを感じさせない

フードを手にしていないときはオイデで来ない。
はてさて離れた犬はどのようにして、飼い主がフードを手にしたことを知るのか?
犬も我々も、感覚器官を通じてそこに「もの」が存在すると理解します。
離れている場合、味覚と、触覚は使えません。
嗅覚はどうかというと、犬は確かに鼻がいいかもしれませんが、匂いの出どころをピンポイントで探り当てるには、スニッフィング(鼻を近づけクンクン嗅ぐ)をしないと無理です。離れていれば、それはできません。
残されるのは、視覚と聴覚となります。

オイデを教える初期の段階から、フードを手にしているかいないかを、聴覚、視覚で確認させない。すなわち、手にする際の音を聴かせない、見せびらかさない、これが重要となるわけです。

そのためには、トレーニングポーチを犬の見えないところに装着し、フードは音もなく手の中に握り込むようにする。これが重要なのです。
フードは見せびらかさない、用意する際の音も感じさせないように、握り込む
Can! Do! Pet Dog School

フードの2つの役割を知る

犬に限らず動物は、結果的にいいことが起きた行動の頻度を高める。
フードの役割のひとつはこの「いいこと」、すなわち「報酬」としての役割です。
もうひとつは、オスワリであればオスワリの姿勢に導くための道具、「誘導の道具」としての役割です。

先にお話ししたように、フードは音もなく握り込むわけですから、この場合の「フード」とは正確には「フードの匂い」となります。
①フードを音もなく手に握り込み、②その手を犬の鼻先に近づけ匂いを嗅がせ犬の集中を取り、③鼻先を天井に向けるよう誘導する、④犬のお尻が床に着いたら握り込んでいたフードを提供する。

繰り返し行っていると、犬はフードの匂いを嗅がせなくてもフードを握り込んだ手に集中するようになります。

次第に鼻先とフードを握り込んだ手との距離をとって、お尻を床へと導けるようになります。
この段階で、オスワリの姿勢に導くための誘導の道具としてのフードはもう必要ありません。
フードを手にしなくても、オスワリの姿勢へと導けるようになるのです。
フードで犬の好ましい行動に導き、そのフードを報酬として与える。英語圏では「ルワー・リワード・トレーニング」という言い方をしている
Can! Do! Pet Dog School

報酬としてのフードも抜いていく

フードを手にしなくても、オスワリの姿勢へと導けるようになる。でもまだしばらくは、報酬としてのフードは必要です。
特定の行動に対して、報酬を毎回与える。その行動の頻度が高まり定着していったら、報酬は不規則にときどき与えるようにする。すると、動物はその特定の行動を意欲的に続けていく。

これ、学習の心理学での研究で導き出されている、ひとつの法則(詳しく知りたい方は“強化スケジュール”で検索してください)。
その法則に従えば、報酬としてのフードは初期の段階では毎回必要とするが、その行動が定着してきたら(フードを手にしなくてもオスワリの姿勢へと確実に導けるようになったら)、あえてフードは毎回与えない。不規則にときどき与えるようにする、ということです。
さて、この「報酬が与えられる(いいことが起きる)」を、「当たる」という言葉に置き換えてみてください。何か気がつきません?
最初は毎回当たる、やがて不規則にときどき当たるようになる。結果、その行動を意欲的に取り続ける。
そう、ギャンブルにはまってしまう(はめられてしまう)人間は、この法則の正しさをある意味証明してくれているわけです。
報酬としてのフードは毎回必要ない。まぁ、例えは悪いですけどね。そういうことなのです。
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。
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