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犬との信頼関係が一瞬にして崩れ去った出来事|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.95

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「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
前回、愛犬との信頼関係づくりには時間がかかるというお話をしましたが、 今回はその逆で「崩れるときは一瞬」という怖いお話。過去に愛犬との信頼を一瞬にして失った経験をした西川先生。その後どうやって信頼を回復したかも含めてお話します(編集部)。


信頼関係を築き上げていくには時間がかかる。
一方でその信頼関係が、たったひとつのできごとで、ガラガラと音をたてて崩れることもある。
男女間それも、上司と部下のそれも、友人とのそれも、そして犬との信頼関係も同様です。

私も、我がパートナー・ドッグとの間において、それまで築き上げてきた信頼関係を一瞬で崩しまうという苦い経験を、2度ほどしています。
さて、人と犬との信頼関係はどこで測れるのか。
人間と犬は、他の動物には見られない、信頼している相手とは視線をよく合わせるという行動を見せます。
すなわち自発的なアイコンタクトを犬があなたによく向ければ、犬はあなたに信頼を寄せている。逆に、視線を合わせようとしないのは、信頼関係ができていない。そういえるわけです。
2度の苦い経験とは、それまでアイコンタクトがよくとれていたのに、ある出来事を境に、アイコンタクトが一切できなくなった。そうした体験を2度しているということです。
私が何かを行ったわけではありません。いや、何もしなかったのが原因といえる。
まぁ、とにかく話を進めましょう。

シェパードに襲われたプー

まずは初代のパートナー・ドッグ、プーの話です。
ある日、いつものように公園へとお散歩に行きました。
いつも遊んでいたシェパードが公園にはすでにいて、飼い主とおもちゃで遊んでいました。
プーと私はその様子を少し離れて見ていました。すると飼い主が投げたおもちゃがプーの近くに転がってきたのです。プーはそのおもちゃに近づこうとしました。そのときです、シェパードがプーに飛びかかり、仰向けになったプーに馬乗りになって唸り声を上げたのです。
プーはその出来事を境にその犬のみならず、すべての犬に対して攻撃性を見せるようになったのです。
崩れた信頼関係は、他犬とプーとの間のそれもそうですが、もっと致命的なのは私との信頼関係です。
それまでは完全ではありませんでしたが、他犬がそこそこの距離にいれば私にアイコンタクトをよく向けていました。
アイコンタクトは信頼の証。それが、他犬の気配だけでも感じると、一切できなくなった。
少なくとも他犬の気配を感じる状況では、私のことを一切信頼しなくなった、ということなのです。

初代パートナーのプー。彼の話は『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間』にくわしく記してある。よろしければぜひご一読を
Can! Do! Pet Dog School

琉球太鼓に恐怖反応を示したダップ

次は1才を迎えた頃のダップの話です。

事件は、当時しつけ教室を行っていた新宿の百貨店の屋上で起きました。
ちょうどその日は沖縄物産展のイベント「琉球太鼓の演奏」が、クラスが終わったあとの屋上で行われる予定になっていました。
クラスのために設置したフェンスなどを撤去し、あとは演奏を待つばかり。
せっかくの機会なので琉球太鼓への慣らしを行おうと、私はダップ抱き上げて、フードを与えながら演奏が始まるのを待っていました。
のぼり旗を何本もはためかせながら、民族衣装を身にまとった演者たちが登場してきたときのことです。
ダップはフードを口にしなくなったのです。そればかりか、ぶるぶると小刻みに震え始めた。そして演奏が始まると、なんと私の腕の中で暴れ出したのです。
危ないので落とさないように抱きしめていると、ダップは私に抱かれながら大きな方のアレを漏らしてしまいました。
大きな方のアレを漏らしてしまうほどの恐怖。

ダップは自発的なアイコンタクトを期待以上にとり、すでにデモ犬として十分な働きを見せてくれていたのですが、その瞬間から周囲を異常に警戒をするようになり、私とのアイコンタクトをそれまでのようにはとれなくなってしまったのです。

怖がるもの、苦手なものへの慣らし方は、プーとダップを通じて誰よりも学ぶことができた。インストラクターとしての現在があるのは、ある意味彼らのおかげともいえる。感謝あるのみ
Can! Do! Pet Dog School

信頼関係作りをイチからやり直す

犬連れが前から近づいてきてもアイコンタクトをとりながら歩ければ、他犬とのすれ違いは問題なくできます。他犬がいるとアイコンタクトがとれなくなることは、他犬とのすれ違いがうまくできないことを意味します。

実際、ひどいときにはプーは5m間隔での他犬とのすれ違いができませんでした。
アイコンタクトが持続できることは、マテができることを意味します。マテができない犬は、飼い主から視線を外し、その視線の方向に動き出すのです。

ダップの場合は百貨店の屋上では、簡単なマテすらできなくなったのです。
信頼関係作りは積み木を積み上げるようなもの、と言っていいでしょう。積み上げた積み木が崩れたら、元の状態に戻すにはまた積み木を積み直していくしかありません。
プーもダップもその積み直しを、時間をかけて行いました。

いずれも、半年ぐらいかけ積み直しを行うことで、プーはその後1mの間隔での他犬とのすれ違いができるようにまで回復し、ダップは事件の起きた屋上でも以前のようにマテができるようになっていったのです。

信頼関係は1日にしてならず、しかし崩れるのは一瞬。
怖い体験は極力させない、怖がるもの、苦手なものは適切な方法で慣らす。
読者の皆様におかれましては、くれぐれもご注意なされることです。
さてさて文字数の関係で今回の話はここまで。

次回は、怖がるもの、苦手なものの慣らし方について、お話することといたしましょう。

文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。

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