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「大丈夫だよ、友達だよ」となだめたら、犬嫌いは本当に直るのか|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.96

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「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は、犬の苦手克服に関するお話。例えば、犬嫌いな愛犬がほかの犬に向かって吠えたとき、「大丈夫だよ」「友達だよ」となだめていませんか? いつも言っているのに、犬嫌いが直っていないのでは?と、西川先生が疑問を投げかけます。また、愛犬をますます犬嫌いにさせる、飼い主さんのあるある行動も指摘しています(編集部)。


「大丈夫だよ、友達だよ」
ダップと鉄三郎(以下・鉄)に吠えかかっている犬に向かって、その犬の飼い主が語りかけています。
吠えて追い払っているのは、ダップと鉄だけではありません。
近くを通るなじみのない犬には、みんな吠えかかっている。それも激しくです。
大丈夫は大丈夫でないという話は過去のコラムでお話しした通りです。
「大丈夫だよ、友達だよ」って、今まで何回その飼い主は口にしてきたのでしょうか?
その結果、犬の吠える行動は改善できてきたのでしょうか?

効果がない、意味がないことはやめましょう。違う方法を取り入れましょう。
では違う方法とは何か、それは他犬に慣らすということです。
慣れてしまえば、追い払う必要がなくなる。
「近づかないで」「あっち行って」と激しく吠え立てる必要がなくなる、のです。

嫌なことを嫌でなくす方法には、代表的なものが2つあります。
今回はそれらをご紹介していきましょう。

苦手な刺激の中に入れ込んでしまう(暴露法)

苦手なもの、怖がるものに対して、吠えつくというのは、刺激(=苦手なもの、怖がるものの視覚的、聴覚的認知)に対する反応(=吠えつく)です。その刺激に慣らすことで反応をなくしていく。
方法のひとつに暴露法(洪水法ともいう)があります。
苦手な刺激の中に入れてしまうというのが、その方法です。
例えば、線路のそばに引っ越すと最初うるさくて眠れないのが、やがて電車の音が気にならなくなり眠れるようになるというもの。
でもこの暴露法、場合によってはその刺激により敏感に反応するようになってしまう、というリスクがある。
例えば、ヘビが苦手な人を、ヘビだらけの部屋に閉じ込めておく。ヘビが平気になる人がいるかもしれない。しかし、その体験が恐怖体験となり多くはヘビがより苦手になる、そう容易に想像できます。
他犬が苦手な犬を他犬に慣らそうとドッグランに連れて行く。これも暴露法。多くは他犬をより苦手にしてしまう結果となるわけです。
もちろん、前回お話ししたプーの他犬への慣らしも、ダップの周囲の音への慣らしも、この暴露法は用いませんでした。

苦手な刺激に少しずつ慣らす(系統的脱感作+拮抗条件づけ)

もうひとつの方法はこうです。
苦手なもの、怖いものは、距離が近づけば近づくほど、怖くなり、距離を取るほどにその怖さは減ってきます。
近くにいるヘビの怖さよりも、遠くにいるヘビの方が、怖くない。そういうことです。

フードを口にできる距離が把握できれば、それ以上犬を苦手な対象に近づけないことです。
そしてその距離でフードを与える(=いいことを体験させる)。ちょっと怖い、でもどうにかフードを口にできる。その経験を繰り返すとその距離がなんでもない距離になり、少し相手との距離を縮めていけるのです。
どうにかフードが食べられる距離がなんでもない距離になると、フードを口にできる距離を縮めていける。
前のパートナー・ドッグのプーは他犬とのギリギリの距離を探り、その距離を縮める努力を積み重ねていったのです。
ダップへは、太鼓の音でそれを行いました。音の場合、距離に匹敵するのは音圧です。
和太鼓のCDを購入しフードが食べられる音圧から、時間をかけて音圧を上げていける努力を積み重ねたということです。

他犬に慣らす努力を積み重ねたプー。シェパード系は一番慣れにくく、他犬よりも若干距離を取ろうとしているのが、写真でもわかる
Can! Do! Pet Dog School

使ってはいけない方法

ちなみに罰を与えるのはどうか?
プーの他犬に吠え立てる行動に困惑していた当時、犬のトレーニングは訓練士の専売特許といった時代でした。彼らの方法論では、他犬に吠えついたら、または吠えつこうとしたらリードをガクンと強く引き、首を絞めるチョークカラーで首を絞める。罰を与えるというものでした。

犬のトレーニングは訓練士の専売特許の時代とはいえ、海外のトレーナーによるセミナーやDVDなどを通じて、罰を用いないトレーニング手法も少しずつですが日本に紹介されてもいました。
そうしたセミナーやDVDでは、それまでよく行われていた罰を用いる方法は、事態を悪化させるケースが多く取るべきではないと紹介されていました。
なぜなら、吠えつくのは手段で、目的は相手を追い払うこと。罰を与えその手段を使えなくすると、犬は目的を達成するために別の手段を試みようとする。

吠えると罰せられるので吠えずに相手を追い払おうと、すれ違いざま急に相手に突進し噛みつきに行く。そうした行動を見せる犬が出てくることが紹介されていたのです。
実は、他犬に吠えかかる犬の飼い主の取る行動は、冒頭のような語りかけよりも、「コラ!」「ダメ!」と、リードをグイっと引き叱りつけている(罰を与えている)ケースの方が圧倒的に多い。
この叱りつける行為は、事態をより悪化させている可能性が高い。
そのことを、飼い主は理解すべきです。

ちょっと想像してみてください。
「近づかないで」「あっち行け」って、1日に何回も叫ばざるを得ない状況を、叫びたくなる状況を。
それって、ストレスだらけの気の休まることのない日々を送っている、ということです。
無意味な言葉がけ、叱りつけを繰り返している場合ではないのです。
慣らす努力を、行ってください。
ストレスの少ない日々、犬の幸せを願うのなら。

首を絞める道具・チョークカラー。服従関係ではなく、共生関係を目指す家庭犬には必要のない、絶対に使ってはいけない道具
Can! Do! Pet Dog School

文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。

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