ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成29年6月30日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
住民の訴えで規約違反が発覚した
Aさんの管理するマンションの規約では、ペット1頭のみの飼育を認めています。ところがある日、「住民のBさんが規約以上の頭数の犬を飼っていて、吠え声やニオイに困っている」という苦情が住民から寄せられました。Aさんが調べたところ、Bさんはなんと4頭ものミニチュア・ダックスフンドを飼育していることが判明。AさんはBさんに対し、飼育を1頭に減らすように何度も要請しましたが、すべて無視されたことからBさんを訴えました。
しかし裁判になると、Bさんは和解を求めました。Bさんは今のマンションに越してくる前から4頭を飼育しており、仲介の不動産業者にもそのことを伝えたうえで、業者からAさんのマンションを紹介してもらったという経緯があったのです。
手続きが進むなかで、Aさんのマンションに「1頭のみ飼育可」という規約があると知ったBさんは、すぐに仲介業者に確認していましたが、業者は「これは形式上のものですから」と説明。「規約上は違反でも、実際は黙認されるものと認識していた」とBさんは訴えました。
飼育継続を訴えたが認められなかった
Bさんは裁判で、「飼育している4頭はいずれも高齢であるために譲渡が難しく、家族の一員である愛犬を手放すことは考えられない。騒音やニオイについては改善するので、4頭の寿命が訪れるまでの間は何とか飼育を続けさせてほしい」と求めました。しかし、Bさんがマンション側の要請を何度も無視し続けたために裁判になってしまったという経緯があるため、これは認められず、Aさん側の訴訟費用と弁護士費用約32万円の支払いも命じられました。
判決は……飼育中止が命じられた!
愛犬の飼育中止を命じられるのはつらいものです。転居の際に規約に疑問がある場合は、業者を介さず、転居先の管理者に直接聞くのがよいでしょう。
参考/『いぬのきもち』2020年3月号「犬の事件簿」(監修:弁護士 渋谷 寛先生)
イラスト/宮田翔
文/影山エマ