先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
2022年1月11日(誕生日は推定)で、福助が8才になった。毎年驚いている気がするが、8才といえばもう立派なシニア犬だ。見ていると全然そんな老いは感じないしむしろガキンチョのままだが、もうそんなに一緒にいるのか。しかしよく考えればこの連載が始まった当初、福助はまだいなかった。
最初は手がかかった福助
迎えた当初の極度の人間不信や、その後の破壊活動の数々は過去に書いた通りだが、今では何の手もかからない丸いタヌキだ。ある日、帰宅すると枕がズタボロに食いちぎられ、寝室が羽毛だらけになっていたときはさすがに「何してくれとんじゃボケェー!」としかったが(演技で怖い顔して)、それにビビってベッドにオシッコとウンチを同時に漏らされ「あぁぁぁぁ!」と焦りまくったのが嘘のようだ。
大吉はいたずらを注意することも、トイレの場所を教えてくれることもなかったが、怯えた目をした福助を受け入れていつも優しい目で見てくれていたから、のんきでお気楽なやつになったんだと思う。性格だけでなく、体格も年々丸くなっている気がするが。
この8年で変化したこと
それにしても、8才といえば、大吉に続いて福助も7才半で突然いなくなった富士丸を越えたことになる。あの7年半がどれだけ濃密な時間だったのかと今は思うが、きっとこの先、そう感じるときが来るんだろう。あまり考えたくはないが、経験したからついつい頭の片隅でそんなことを思ってしまう。
この8年でいろいろ変わったことがある。鎌倉の腰越に引っ越したし、山の家も手に入れた。海沿いに住んだのは彼らのためではないが(そもそも水嫌い)、山の家は完全に彼らが喜ぶからだ。とはいっても、おかげで私もせっせとドッグランを作ったり草刈りをしたり、やることが増えて結構楽しんでいる。
山なんて一切興味がなかったのに、犬というのは不思議なやつらだと思う。この先、少しでも長く元気でいてくれたらそれでいい。福助も8才になったが、子犬のころとやっていることがほとんど変わっていないのがうれしい。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。