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飼ったばかりの子犬を、人に慣れさせるときの注意点 |連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.119
前回のコラムで「人に慣れさせるためには、犬好きな人に頼んでフードをあげてもらう」という方法をご紹介しました。今回は、フードをあげてもらう際の注意点について。犬がどんな反応を見せたらあげてもらってよいか、相手にはどこに立ってもらうかなど、超具体的にアドバイスします(編集部)。
少し前にこんな生徒さんがいました。
新婚旅行で、とある国を巡った。
行く先々で出会う人たちに非常に親切にされた。結果、その国の人たちは皆いい人という記憶を思い出に帰って来たわけです。
とっても素敵なお話です。
とはいえ、その国の人たちはみんな親切……なわけではありません。
次にその国を訪ねたら、出会う人から嫌な体験をさせられるかもしれません。
でも、おそらくそうした人に出会っても、その人は例外で全体的には「その国の人たちはみんな親切」という思いは、簡単には変わらないと思います。
何の話かというと、犬に「人間はみんないい存在」と印象づける方法、前回予告しておいた「フードを与えてもらう際の注意点」に関係するお話です。
正面を向かずに目を見ず近づいてもらう
フードを与えてもらうにしても、それ以前に相手を怖い存在と印象づけてしまう可能性があるわけです。
それでは、人慣らしになりません。逆に人を苦手にしてしまう可能性がある。
先の新婚旅行の例でいえば、出会う人出会う人から嫌な体験をさせられたとしたら、とてもではありませんがその国の人たちは皆いい人、と印象づけて帰って来られるわけがありません。
フードを与えてもらうよう頼む際には、「目を見ずに、正面を向かずに、回り込んで近づいて」あるいは「目を見ずに、正面を向かずに、斜めから横歩きで近づいて」とお願いする。
それが、「フードを与えてもらう際の注意点」の1つ目となります。
犬が自ら相手のにおいを嗅げる位置で止まってもらう
犬が相手の匂いを嗅げる位置で止まってもらうように頼みます。
犬同士が出会ったときの様子を思い出してください。お互いに相手の匂いを嗅ごうとします。
それと同様に、多くの犬はここで相手の匂いを嗅ごうと相手に鼻を近づけます。
相手の匂いを嗅いでも別段怖がる様子などを見せないのであれば、相手にフードを渡し手の中に握ってもらいます。そして、フードを握ったグーの手の甲の匂いを嗅がせてから、フードを与えてもらいます。
結果的にいいことが起きる状況を犬は受け入れる。
すなわち、その人が近づくこと、その人の声、その人の匂いがある状況を受け入れるようになるわけです。
相手から距離を取ろうとした場合は
回り込んで相手が近づいてくる際、匂いを嗅げる位置で相手が止まった際、相手の匂いを嗅いだ際、いずれかの時点で相手から離れようとする、鼻先を相手とは別方向に向ける、こうした仕草を見せる場合は、すでに相手からストレスを感じている(近づいてほしくない)ということです。
こうした仕草が見られた場合は、まずは相手に離れてもらいます。次に飼い主からフードが食べられる距離から。時間をかけて(フードが飼い主から食べられることを確認しながら)相手に少しずつ近づいてもらう。
少しずつ慣らす、コラムのVol.96で紹介した方法を、相手に対して行うことになります。
社会化期とは好奇心の方が警戒心を上回っている時期です。
飼い始めの早い段階から先の注意点を守り人慣らしを行えば、相手から離れようとする、鼻先を相手とは別方向に向けるといった仕草を犬は、そうは見せません。その段階で、出会う人出会う人からフードを提供してもらう体験を重ねれば、人間はみんないい存在という記憶を脳に定着させます(先の新婚旅行の体験のように)。
しかし、社会化期を終えると話は違ってきます。
社会化期が終焉を迎える頃から警戒心が強くなり、社会化期の人慣らしが十分にできていないと、相手から距離を取ろうとする仕草をとる傾向が強くなるからです。
だからこそ、飼い始めの早い時期からの、人に対する社会化(のみならずさまざまなことやものへの社会化)が重要となるのです。
もっとも今回の人慣らし、番犬に育てたいのならやってはいけません。他人を警戒しなくなるので番犬にならないですから。
あくまでも、みんなに愛される、どこでも楽しい時間を共有できるコンパニオン・ドッグに育てる、そのための方法ですからね。
西川文二氏 プロフィール
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