先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
2022年6月号で雑誌「いぬのきもち」は20周年を迎えます。
今回は「うちのコにじゅうまる」(20周年をかけてます!)をテーマに
いぬのきもちWEB MAGAZINEの連載陣が特別コラムをお届けします!
「うちのコにじゅうまる」というテーマで何か書いて欲しいと言われたが、何を書けばいいのだろう。大吉と福助については、よくできたやつらだと思う。
大福コンビのゴハン事情
わが家は彼らのゴハンを手作りしており、鶏肉や豚肉、キャベツや白菜などに少しの白米などを炒めて冷ましてから与えているのだが、ペロッと食べることはまずない。だいたいちょっと食べて「いまいち」みたいな顔でどこかへ行ってしまう。どうしたら気に入ってくれるのか、さんざん試行錯誤して分かったのだが、おそらく彼らは気分で食べたり食べなかったりする。
ある日ペロッと完食したので、次の日も同じものを作ったら、「またこれか」という顔でそっぽを向くなんてことはザラだ。かと思えばドライフードは喜んで食べるので、そうしてみたらまたすぐ残す。
結局、大吉と福助にはドライフードの器と手作りの器の2皿ずつ出して、好きな方を好きなときに食べてもらうスタイルに落ち着いた。朝は残しても、昼頃に思い出したように食べる「遊び食い」をしたり、結局食べ残して翌日捨てたりする。
傾向を見ていると、肉類が好きなようだ。野菜だけ差し出しても絶対食べないが、豚しゃぶを1枚あげると食べる。しかし、栄養バランスのとれた食事が大切だ。
フード改善の秘策!?
そこでいいことを思いついた。私がカレーやビーフシチューを作るときに使っている「バーミキュラ」という鍋があるのだが、煮込むと食材がトロトロになる。これを応用して彼らのゴハンにも使えば、肉と野菜の栄養が溶け込んで彼らが喜んで食べるメニューができるのではないか。
しかし、私が使っている直径22センチは大きすぎる。そんなに作っても仕方ない。そこで直径14センチの彼ら用のバーミキュラを買った。ちなみに1万2000円もした。でも彼らのためならかまわない。
届いた鍋に、まずニンジン、白菜、キャベツなど細かく刻んだ野菜を入れ、その上に鶏肉を並べ、蓋をして1時間ほど煮込む。朝やっている時間がないので、前日の夜に仕込む。でき上がったものを味見してみると、調味料は使っていないのに素材の味が引き立っていて、素朴でうまい。これなら気に入ってくれるに違いない。
翌朝、大福に与えてみると、「何これ」という顔でどこかへ行ってしまった。これならどうだ!とバージョンを変えて数日試してみたが、結果は同じだった。彼ら用に買ったバーミキュラは結局ホコリをかぶっている。
そんな感じで食に執着心がない大福だが、やせることもなく体重はキープしている。おそらく自分に必要な食事の量を把握しているのだろう。食べ物を横取りしたりしないから争いごともない。よくできたやつらだと思う。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。