1. トップ
  2. 犬が好き
  3. 連載
  4. 犬ってホントは
  5. 【犬を災害から守ろう③】オイデの教え直しと、災害に備えたオイデのやり方|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.147

犬が好き

UP DATE

【犬を災害から守ろう③】オイデの教え直しと、災害に備えたオイデのやり方|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.147

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
愛犬を災害から守るために教えておきたいことを紹介するシリーズ3回目は「オイデ」です。オイデはいざというときに確保して犬の身を守るためには必須のしつけ。西川先生が、基本のオイデと、離れたところから呼ぶオイデ、災害時に備えて笛の音で呼ぶオイデと、3種類解説します(編集部)。

前回に引き続き、前々回のお約束に応えます。
「笛で犬を呼び寄せる」トレーニングの解説です(なぜ教えるかは前々回のコラムをご覧ください)。
ところで、そもそもオイデなどの合図で、犬はそばまでやってきますか?

いかなる状況でもオイデなどの合図に反応して飼い主の元にやってくるという犬は、実はそれほど多くありません。
そばまで来たとしても、「何かくれるの? それとも取っ捕まえる気なの?」といった感じで、1mほど離れて止まる。
おやつを見せればさらに近づくが、捕まえようとすると逃げる。そんな犬が少なくありません。

「すわ、地震」。
机の下など安全な場所に犬と隠れるためには、呼び戻しができることが不可欠です。オイデなどの合図で確実に飼い主のそばまで来ないことは、危険回避、安全確保ができないことを意味する(「すわ」は突然のできごとに発する言葉です)。
ということで今回は、まずは呼び戻しの教え直しから。もちろんそのあと「笛で犬を呼び寄せる」トレーニングへと話を進めていきます。
※離れた位置からでも合図で確実に来る犬の場合は、以降出てくる「呼び戻しの教え直し」と「離れた位置からの呼び戻し」の見出しの部分は、読み飛ばして結構です。

呼び戻しの教え直し

オイデなどの合図でそばまで来ない犬は、合図を変えて教え直します。今までが「オイデ」だったら、「カム」でも「ヒア」でも「そばヘ」でもなんでも構いません。
教え直しは以下のようになります。
犬がどこかに行かないようにリードをつけ、フードを握りこんだグーの手が、鼻先に届く位置に立ちます。
呼び戻しのトレーニングのスタートは、アイコンタクトから始めます。なぜなら、初期の段階では名前を呼んで飼い主に注目しなければ、犬は聞く耳を持っていないからです。

1.名前を呼ぶ(フードを握りこんだグーの手はご自身の顎の下に)

2.飼い主に注目する

3.フードを握りこんだグーの手を犬の鼻先に提示しながら飼い主は数歩下がる

4.(フードを握り込んだグーの手についてくる)飼い主のそばに来る(最終的にフードを握りこんだグーの手は飼い主の体に密着させる)

5.いいことが起きる


上の流れがスムースにできるのであれば、合図を上記1~5の流れの3の前に挟み込んで(先行刺激としてつけて)いきます。
a.名前を呼ぶ

b.飼い主に注目する

c.合図を発する

d.フードを握り込んだグーの手を犬の鼻先に提示しながら飼い主は数歩下がる

e.飼い主のそばに来る

f.フードを提供する

という風にです。

離れた位置からの呼び戻し

さて、先の一連の流れがスムーズにできるようなり、犬も確実に飼い主のそばまで動くようになったら、この先はリードをご家族に持ってもらいます。
そして、ご自身は少し離れたところから、先の一連の流れ(a~f)を行います。
いきなり離れてはいけません。まずは、グーの手を伸ばすと犬の鼻先から10㎝ほど距離が取れるくらいの位置からです。その位置からの呼び戻しがスムーズにできるようになったら、鼻先から20㎝、30㎝……50㎝……1m……3mと、呼び戻す距離を伸ばしていくのです。
「リードが張らないように、犬に動きを合わせてついて来るように」。家族に協力してもらう際は、これを忘れずに伝えてください。
リードがピンと張ることは犬の首にショックがかかり、犬にとって嫌なことが起きることになります。結果的に嫌なことが起きる行動を犬は取らなくなります。すなわち、オイデなどの合図を発しても来ない犬にしてしまうからです。
離れている犬を呼び戻すトレーニング。近い距離から少呼び戻す距離を少しずつ伸ばしていく
https://cando4115.com/

災害に備えての呼び戻し

離れた位置からの呼び戻しができれば、「笛で犬を呼び寄せる」トレーニングに入れます(しつこいようですが、その必要性は前々回のコラムにて)。
教え方は簡単です、呼び寄せる合図で確実に来るのであれば、呼び寄せる合図を発する前に先行刺激として笛を鳴らすのです(笛は防災バッグに常備のこと)。
前回お話しした高次条件付けです。犬は先行刺激に反応するようになる、さらには先行刺激の先行刺激にも反応するようになるからです。

さて、ここまでの呼び戻しは、飼い主と犬が同一空間にいるという条件付きです。
同一空間にいない場合の呼び戻しも教えていきましょう。
飼い主が隠れて犬を笛で呼び戻すのです。最初はソファの後ろに隠れたり、隣の部屋のドアの影に隠れたり。それができたら、隣の部屋もクローゼットに隠れたり、さらには……と家のさまざまな場所から呼び戻す練習をします。

最後に注意点をひとつ。
確実に来るようになった合図や笛の音で犬を呼び寄せたあとには、絶対に犬が嫌がることをしないこと。
繰り返しますが、結果的に嫌なことが起きる行動を犬は取らなくなります。
確実に来るようになった教え直した合図や笛の音に対しても、やがて少し手前で離れて止まる、すなわち以前の合図と同じ反応を示すようになってしまう。

もしブラッシングなど犬が嫌がることをするのであれば、確実に来るようになった合図や笛の音は使わない。フードを床にばら撒きそれを食べている間に抱き上げ、ブラッシングなどの次の行動に移ることです。
さてさて、当コラムの説明だけでできるようになるか。それはやってみないとわかりません。まずは試しにトライしてみてください。意外といけるかも、です。
姿を隠して笛で犬を呼び戻すトレーニング。教室では迷路的なものを作って行う
Can! Do! Pet Dog School
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(17才)、鉄三郎くん(13才)ともにオス/ミックス。
CATEGORY   犬が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る