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【犬を災害から守ろう②】緊急地震速報の音で犬が自分からハウスに入って身を守るやり方|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.146
愛犬を災害から守るために教えておきたいことを紹介するシリーズ2回目は、緊急地震速報の音を聞いたら犬が自分からハウス(クレート)に入る方法。地震が起きてすぐ飼い主さんが確保に動くより、愛犬が自ら頑丈なクレートに入ってくれれば身を守れる可能性が高まります。まずクレートに入れるかどうかがキモですが、西川先生が段階を踏んで解説します(編集部)。
今回は「緊急地震速報の音でクレートに自ら入る」トレーニングの解説。
とはいえ、「クレートにそもそも入らない犬」と「入るけど言葉の合図で入るわけではない犬(入ってしまえば中でおとなしく待機できる)」と「“ハウス”などの合図で入って中でおとなしく待機できる犬」では、何から教えるかがそれぞれ異なります。
ということで、今回はレベル別でお話を進めます。
話を進めやすく「クレートにそもそも入らない犬」をレベル1、「入るけど言葉の合図で入るわけではない犬」をレベル2、「“ハウス”などの合図で入る犬」をレベル3とします。
通常は1→2→3とレベルアップして解説するのが一般的かと思いますが、それでは3のレベルの人は必要のない部分を読み進めていかないといけない。ということで、今回は3→2→1と話を進めていきます。
レベル3向け:“ハウス”などの合図で入る犬の場合
準備として、緊急地震速報の音を録音し、手元の操作で再生できるようにしておきます。
そして、ハウスなどの言葉の合図を発する前に緊急地震速報の音を聞かせる。
学習の心理学に則れば、合図は先行刺激として教える(え? ここがわからない? であればレベル2向けを読んでから再度、レベル3向けに帰ってきてください)わけですが、先行刺激Aに反応して行動を起こすようになったら、先行刺激Aの前にさらに先行刺激Bをつけると、その先行刺激Bに反応して行動を起こすことがわかっています(高次条件付けといいます)。
すなわち、ハウスなどの合図を発する前に緊急地震速報の音を聞かせていると、緊急地震速報の音に反応してハウスなどの合図を発する前にクレートに入るようになるのです。
前回紹介した、「災害に備えて」クラスに参加する方はこのレベルですので、多くの犬はひと月以内に緊急地震速報を音に反応してクレートに自ら入るようになるのです。

レベル2向け:合図だけでクレート入るわけではない犬の場合
そこまでできている犬であれば、トレーニングは以下のようになります。
合図の教え方は、学習理論のひとつである「三項随伴性」に基づきます。
三項とは、「刺激」と「行動」と「結果」のこと。
「先行刺激→行動→結果(いいことが起きる、あるいは嫌なことがなくなる)」というパターンを繰り返し体験していると、先行刺激に反応して行動を起こすようになるのです。
その時点で、先行刺激は合図(弁別刺激)として機能していきます(「三項随伴性」についてはコラムVol.44、Vol.20、Vol.45もぜひ)。
すなわち、フードを投げ込めばハウスに入るのであれば、フードを投げ込む直前にハウスなどの言葉による先行刺激をつけるだけです(トレーニング段階では、クレートに入ったらフードを必ず与えるように)。
ハウスなどの合図の代わりに緊急地震速報の音を用いれば話が早いのでは? とお思いの方もいるでしょう。
それはそうなのですが、緊急地震速報の音よりもハウスなどの合図でクレートに入れることの方が、まずは日常生活で重要となります。
ということでまずはハウスなどの合図から教えていく。そういうことなのです。
レベル1向け:クレートにそもそも入らない犬の場合
前後が開くタイプなら、まずは中を通過できるように慣らす。躊躇なく通過できるようになったら、途中でフードを与え続け中にとどまることを教える。
以上のような前段階を経て、フードを投げ込むと中に入り、頭から出てくるようになったら、クレートから出てくる前にフードを次々にクレート内に入れます。
クレートに呼び込む合図はこの段階でつけていくことができます(レベル2向けを参照)。並行して、以下も進めていきます。
中にとどまっているとフードが次々と出てくると犬が理解してきている、そうした様子が見られてきたら、フードを入れるのをやめてみる。そこで「あれ? 中にいるのになんでフードが出てこないの?」的な態度を見せるようであれば、初めてここで扉を閉めます。
そして、扉を閉めている間、フードをつぎ込みます。扉を開けたら、フードは与えない。「早く扉が閉まらないかな」。そんな心理にさせていくわけです。
その先は、同様に飼い主が見える側にカーテン代わりの掛け布をし、フードをつぎ込み、掛け布を外したときには、フードは与えない。「早くカーテンを閉めてくれないかな」という心理に。さらには、掛け布をして少し離れては戻ってフードを入れる。「飼い主離れてくれないかな」という心理に。
それぞれの段階で、重要なのは騒ぐ前にフードを与えること。例えば20粒与えるのに、当初は20秒しかもたないかもしれません。しかし、続けていくとその20粒で、1分、2分、5分……10分、時間を伸ばしていけるようになります。
こうした段取りをしっかりと踏むことで、どんなにクレートを嫌いになっている犬でも、1カ月から1カ月半で、喜んで中に入って中で待機できるようになります。
並行して教えていた合図にも反応するようになっていれば、レベル3向けのトレーニングにも入っていけます。

え? クレートを持っていない? であれば、まずはペットショップに出向き、適切なサイズのクレートを用意するところから、ですね。
西川文二氏 プロフィール
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