先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
雪が残るうちに大福が帰って来てよかった。大吉はもちろん、特に福ちゃんはうれしそうだ。彼はなぜか鼻から雪に刺さる「鼻ズボ」や、仰向けになってズリズリ滑り落ちる遊びが好きだが、本人が楽しそうなので何よりだ。
雪のある場所に遊びに行く際の注意点
雪遊びはそれぞれだが、雪に喜ぶ犬は多い。とはいえ、雪があるところに犬連れで遊びに行くのは注意が必要だ。そこで今回は、若い頃、豪雪地帯である野沢温泉で2シーズン冬を過ごした経験がある私から、雪の上を運転する際の注意点をまとめておくので、もし犬と車で行くときは参考にしてもらえれば。
ちなみになぜ野沢温泉で過ごしたことがあるのかというと、当時旅行会社に勤めており、スキーツアーを扱っていたので、現地駐在員として滞在していたのだ。その会社はレンタルスキー店もやっていたので、スキー板やブーツの配達もしていた。
当時はまだスパイクタイヤがOKの時代だったが、それでも大阪生まれで雪道なんて運転したことがなかったから、怖い思いはたくさんした
まず、ノーマルタイヤでは絶対に行かないこと。そしてFF、FRなどもNGだ。最低でも4WDのスタッドレスタイヤを履いていることが条件である。大丈夫だろうと2駆のノーマルタイヤで雪の積もる地域に行くと、事故を起こすか溝に落ちるか壁にぶつかると思っておいたほうがいい。
単発の旅行のためだけにスタッドレスタイヤを買うのがもったいないという場合は、レンタカーで4WDのスタッドレスタイヤと注文できるのでそれを使えばいい。
犬が喜ぶ姿を見るためにも
次に重要なのが、下り坂では極力ブレーキを踏まないこと。オートマでも1速、2速あたりに入れて、どうしてもブレーキを踏みたいときは、ゆっくりと少しだけ踏むこと。
間違ってもギュッと踏んではいけない。そうするとタイヤがロックして、ツルツル滑り出す。ブレーキを踏んで滑り出したと思ったら即座にブレーキから足を放すこと。そうしないと滑ったまま制御不能になり、くるくる回ったりする。逆に上り坂の場合、そこまで注意する必要はない。重要なのは、たとえ傾斜がゆるくても下り坂に気をつけろということである。もちろん急ハンドルもいけない。
他にも大切なのは、スピードは出さないこと。当たり前のようだが、見ていると40キロ以上、下手すると60キロくらいで走っている車を見ることがある。雪が積もっている、または凍結している場合、ブレーキは踏めないし、停まらないので、そういう場合、平坦でも下り坂でも20キロくらいに抑えておいたほうがいい。
雪が解けかかっているときも注意が必要だ。日の当たるところは綺麗になくなっていても、日陰には雪が残っている。そこを普段通りのスピードで走っていると、手遅れになる。
これは私が実際に経験したことだが、雪が解けていたから普通に50〜60キロくらいで走っていて、カーブにさしかかったところで、そこが日陰でわだちが残っているのが見えたが気付いたときには手遅れで、くるくる回って壁に激突したことがある。ただ、ぶつかったのは除雪で積み上げられた雪の壁だったから車も私も無傷だったが、電柱や家があったら、廃車だし大変なことになっていただろう。解けかけてわだちになった雪はハンドルを取られるから注意したほうがいい。
そして、実は雪にも滑りやすい雪と滑りにくい雪がある。一番怖いのは、雨の後に雪が降った場合(または晴れて雪が解けた上にまた雪が積もった場合)で、氷の上に粉雪が積もると最悪である。見た目では分からないのがやっかいだ。
運転する前に少し歩いてみて、雪の状態を確かめることも重要だ。そして、氷の上に雪が積もっている場合はできれば車に乗らないほうがいい。そうでなくても、雪が積もっているときは早朝と夜間の運転はなるべく控えたほうがいい。なぜなら、気温が低いうちは凍っているからだ。それが晴れた日は昼近くなると解けているので、少しはマシになる。
雪道での運転の注意点はざっくりこんな感じだが、雪道に慣れないなら特にビビりすぎるくらいビビっておいて損はない。私は今でもビビりまくって運転している。背後に車が来たら脇に避けて譲ればいいだけだ。犬が喜んで駆け回る姿を見る前に事故らないためにも、注意してね。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。