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大福の圧に耐えかねて【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

以前にも書いたと思うが、大福は態度でもアピールしてくる。仕事や用事が重なり、週末どこへも行けない日が続くと、明らかに不服そうにする。これを私は「最近つまんねーオーラ」と呼んでいるが、八ヶ岳に移住してから色々なスポットに気軽に行けるようになり、オーラを出す周期が短くなった気がする。

お出かけ作戦前にまさかの出来事

そしてこの「最近つまんねーオーラ」は、イレギュラーなお出かけをすることでしか解消できない。最近の大福の傾向と対策から、そろそろオーラをかもし出す時期だなと読んでいた私は、週末登山する予定を立てていた。それで満足するだろうと思っていたのだ。
ところが、予報は雨で前日に中止となった。まずい、どうしよう。なぜなら大福に「雨なんだからしょうがないじゃん」と言ったところで通じないからだ。また1週間、仕事する私の背中に向かって、大福は「最近つまんねーオーラ」を浴びせ続けるのか。それは避けたい。
そこで妻と天気図を見ながら相談した。入笠山は午後には雨が止むらしい。けれど、雨上がりの登山道はどろどろになっている可能性が高い。却下。蓼科湖方面もアウト。そうして見ていくと、山梨県は曇りで雨が降らなそうだった。そのあたりに「みだいみなみ公園」というのがあるらしい。よし、決まり。

予想以上に満足だった公園散策

というわけで、目的地に到着したが、1日で回れないほど広大な公園だった。川沿いと林道の散歩道があるだけで、これといった施設はないが、大福にとってはそれで十分。逆に娯楽施設なんかより、自然の多いところの方が喜ぶ。
初めての場所を散歩するだけで、大福はニコニコだった。曇りだったが、その方が気温が上がらずありがたい。何もないところを、ただ景色を眺めながら歩くだけ。それで大福は大満足らしい。
前回も犬は初めての場所に来ると喜ぶと書いたが、仮に犬が知らないところへひとり(1頭)で行ったとしても、不安だらけなんだと思う。でも私ら夫婦と一緒だったら、安心できるし、それが嬉しいんだろう。そう思うとかわいいやつらだなと改めて思う。
結果的に、彼らの「最近つまんねーオーラ」圧のおかげで、なんとか時間をつくって、このような呑気な時間を過ごすことができる。大福がいないと、何もないところをただ歩くだけなんてこと、私は絶対しないタイプの人間だ。
1時間ほど歩いて、ちょっと休憩して帰宅した。夕食を食べる私たちの隣で、大福は満ち足りた顔で寝落ちしていた。ほどよく疲れたのだろう。「最近つまんねーオーラ」解消と同時に、こいつらと一緒で良かったと思った。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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