犬が好き
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進行する病、人間不信……行き場のない犬たちが幸せを掴むまで
※保護犬の情報は2018年2月7日現在の情報です
行き場のない動物たちの 受け皿となるアーク
埼玉で保護されたごまくんを引き取った寺尾英明さん・栄里さん夫婦とのお出かけに、うれしそうな表情のごまくん。初めは男性が苦手だったごまくんも、今では英明さんに心を許している
イギリスから来日したエリザベス・オリバーさんにより、動物救援組織として設立された「アニマルレフュージ関西」(頭文字をとってARK、以後アーク)。アークのスタッフが埼玉でさまよっていたところを保護したごまくん(推定13才)は、さまざまな病気と問題を抱えていました。フィラリア症、白内障、そして噛むことなど。新しい飼い主さん探しは長い道のりになるかも、とのスタッフたちの心配をよそに、保護から3カ月で寺尾英明・栄里さんご夫婦との出会いがありました。
数年前、実家から引き取った愛犬を見送った寺尾さん夫婦。また犬を飼いたいと話していた英明さんは、「今度飼うなら保護犬」と考えていました。アークは活動が活発だったことから、信頼できる団体だと思い、毎日ホームページを閲覧していたのだそう。そこで目にしたのが、前に飼っていた犬にそっくりのごまくんでした。ホームページの画像を見て、いても立ってもいられなくなった英明さん。さっそく夫婦でごまくんに会いに、アークの事務所まで足を運びました。その後「ごまくんを迎えたい」とアークのスタッフに伝えると、ごまくんとの生活は相当な覚悟が必要であることを、念を押されたそうです。
それでもひるむことのなかった英明さん。迎えるにあたっての条件をクリアし、めでたく寺尾さん宅にごまくんを迎えました。
パソコンに向かって仕事をする栄里さんのまわりを、ぐるぐる回って様子をうかがうのが日課のごまくん
「これまでのフォスターさんが、ごまのことを逐一記録してくれていて、とても助かりました」そう話す栄里さんのまわりをぐるぐると回るごまくんは、いつも顔を左側に傾けています。来て半年くらいのころ、「前庭疾患」にかかったことが原因です。またフィラリア症により「肺高血圧症」とも診断され、散歩の途中で倒れることもしばしば。毎日の投薬は欠かせませんが、ごまくんはいたって元気です。
「初めのころはなんにでもおびえていたごま。どんな経験をしてきたのかわかりませんが、きっと人間不信なのでしょう。だからいつか人との暮らしもいいものだなって思ってくれたらうれしいです。それにごまは、とても健気でやさしい性格。朝起きて寝室をのぞき、まだ私たちが寝ていたら、ごまもまた自分の寝床に戻って寝るんです。なんだかごまは、人に誠実でいることの大切さを日々教えてくれているよう。だからごまは、私たち夫婦への素敵な贈り物です」と栄里さんは話します。
散歩コースの途中にあるドッグサロン。ごまくんはここのオーナーさんが大好き
日本初の動物福祉施設 「篠山アーク」が目指すのは動物も人も幸せになれる場所
音に慣れるように音楽が流れている「篠山アーク」の犬舎。そして夜間はスタッフが泊まり、こまめに犬たちの様子を見守っている
これまでアークで保護した犬たちの情報を、細かく記した「DogFile」はすでに48冊目に突入しました。「一頭一頭、すべての犬にドラマがあり、思い出を語りだしたら、何日あっても足りません」と話すアークスタッフの奥田昌寿さん。
これまで保護した犬すべての記録は、誰が見てもわかるように、紙とデータに残している
これからのアークの目標は、一日も早い「篠山アーク」の完成。現在、能勢のシェルターから車で40分ほどの篠山市に「篠山アーク」(動物福祉施設)を建設中です。2つの犬舎棟とドッグランが完成し、すでに45頭の犬たちが暮らしています。犬舎は2つに分かれた室内を自由に行き来でき、一部屋ずつ床暖房を完備、エアコンも一部設置しています。シニア犬でも快適に過ごせるよう、こまやかな配慮が施されています
今後はトレーニング棟、クリニック室、病気の動物を隔離できる検疫室、事務所棟などを、7000坪ある土地に支援者たちの力を借りて建設予定。動物たちのQOLを保ち、保護したすべての命の幸せを願って、今日もアークは活動しています。
広いドッグランでは、ボール遊びなどで思いっきり走り回れる。もちろん散歩もしっかり行う
1回目の記事はコチラから>>
取材・撮影・文/尾﨑たまき
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