犬が好き
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虐待で障がいを負った犬・未来ちゃんと、子どもたちへ伝えたいこと
「命の授業」に現れた、ホンモノの未来ちゃん
今西さんに引き取られた未来ちゃんが、障がいを乗り越えて楽しげに砂浜を走っている写真がスクリーンに映し出されると、児童たちから感嘆の声が上がります。
「ピカピカに輝く今の未来にしたのも、ボロボロに傷ついた以前の未来にしたのも、どちらも人間がしたこと。あなたはどちらの人間になりたいですか?」
この今西さんの問いかけに、児童たちは一斉に「ピカピカ!」と叫びました。
そして話も終盤に差しかかったころ「本日のスペシャルゲストです」と今西さんがアナウンスすると、なんと体育館の後方から未来ちゃんが登場!
大きな歓声が上がり、みんな一斉に立ち上がります。
ピカピカに輝く実物の未来ちゃんが目の前に現れて、思わず泣いてしまう児童もいたほどです。
「みんなは、どんなルールをつくる大人になりたいですか?」
「この世界のルールを作るのは私たち人間です。
犬や猫を捨てていいというルールをつくるのも人間。
命あるものを大事にするというルールをつくるのも人間。
自分が大人になったとき、どんなルールをつくる人間になりたいか、みんな考えてみてください」
こうして命の授業が終わりました。
目の前の悲しい現実がきっかけで、ノンフィクションを執筆
そもそもなぜ犬を題材にしようと思ったのか、それは以前に見かけた光景が発端でした。海岸に犬を捨て車で走り去る人や、犬がそこから逃げないよう、リードを木などにくくりつけて立ち去る人など、たくさんの悲しい現実を目の当たりにしてきたのだそうです。
しだいに、動物を簡単に捨ててしまう大人になるのは、子どものころからの環境が影響するのではないかと感じ始めた今西さん。
おかしいことをおかしいと気づけない大人にならないよう、まず子どもたちに命と向き合うことを伝えたいと考え、犬をテーマにしたノンフィクションの児童書を書き始めました。
その数いまや40冊を超えます。
直接子どもたちに「命」「幸せになる方法」について伝えたい
この授業のきっかけを作ったのが、未来ちゃんとの散歩で立ち寄る公園で、いつも見かけていた女の子でした。未来ちゃんが現れるとうれしそうに駆け寄り、足のない未来ちゃんをいたわりながらやさしくなでていた少女。それにはある訳がありました。
「その子は家庭環境で悲しい思いをしていたんです。
心に傷を負った自分と、誰かに傷つけられた未来とを重ねて見ていたんでしょうね。
だから幸せそうに散歩をする未来を見ると、自分も幸せな気持ちになれたのではないでしょうか。
それを見て、直接子どもたちに“幸せになる方法”を伝えられたらと思うようになり、未来と『命の授業』をしようと考えました」
そう話す今西さんの傍らで昼寝をする未来ちゃん。
12年間いろいろな学校にいっしょに行き、気がつけば未来ちゃんは、13才の誕生日を迎えていました。
※各情報は2018年12月5日現在の情報です
出典/「いぬのきもち」2019年2月号『犬のために何ができるのだろうか』
撮影/浜田一男、取材・撮影・文/尾﨑たまき
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