犬が好き
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東日本大震災から3年を迎えた福島の保護活動のいま
被災地でもペット保護の動きがはじまった
文・写真/滝野沢 優子
何もかもが必死だった震災直後の福島。そのときペットを取り巻く環境は?
東日本大震災の当日、震度6強の地震に襲われた。長い横揺れが終わってから外に出てみると、庭や道路には亀裂が入り、側溝は落ち、家は傾いていた(後に大規模半壊の認定を受けた)。
被災地に残されたペットは?
ネットで検索してみると、県外の動物愛護団体が果敢にも原発近くまで入ってレスキューしているのがわかった。福島県民が放射能を恐れてどんどん県外へ避難していく一方で、福島からはるか遠く離れた場所から被爆を恐れずに動物を助けるために頑張ってくれる人たちがいる! 本当にありがたいと思った。
私も動物のためになにかしなくては。
4月初旬、意を決して団体に連絡を取り、私のペットレスキュー活動が始まった。
当初は福島県内に造られた急場ごしらえのシェルターでレスキューされてきた犬猫の世話、支援物資の仕分けなどに追われた。まだボランティアもわずかで、とにかく現場はバタバタしていた。
避難住民が自分で行くこともできたのだが、一次避難所では放射能被害がひどいので自宅に戻れない、と説明されていたそうだ。マイカーを置いて役場が用意したバスで避難した人は交通手段もなかった。このときに飼い主が一時的に戻れていたら、かなりのペットは助かっていたと思う。
外につながれていた犬の中には自衛隊員や警察が黙って鎖を外してくれたり、食べ物を与えてくれたりしてとりあえず生き延びたものもいた。放浪しているうちに圏外へ出たりレスキューされて飼い主と再会できた犬も少なからずいる。
家畜は…、壮絶だった。
2011年4月22日。20㎞圏内が警戒区域に。そして誰も入れなくなった
それまでは誰でも入れたので、私も何度かレスキューに参加した。このころは、首輪のついた犬があちこちで放浪していて、衰弱した犬や人懐こい犬はすぐに捕まった。
ようやく本格的なペットレスキューが始まった。
行政も動き出し、県の被災ペット専用シェルターも造られ、行政主体のペット捕獲も不定期に開始。ただしペット生息情報や保護に長けた民間団体といっしょではなかったので成果は思わしくなかった。
このころ、正式に20km圏内に入れない私たちは、住民の一時帰宅に同行していっしょにペットを探したり、フードを託して置いてきてもらったり。できる範囲で活動するほか、20km圏内同様に住民が全員避難している原発被災地の川内村、葛尾村、浪江町津島地区、飯舘村などを中心に給餌保護をしていた。
2011年12月、ペットレスキュー目的の公益立ち入りが認められる
そうして2011年12月には、ようやくペットレスキュー目的での動物愛護団体の公益立ち入りも認められ、16団体が20㎞圏内へレスキューに入った。私も2つの団体の枠で許可をもらい、合計8日間活動した。
放浪牛、ダチョウ、イノシシが闊歩し、自然に呑み込まれる圏内
このころは20km圏内にはまだ餓死を逃がれ自由に放浪する牛がたくさんいたが、一時帰宅者や作業者の車との衝突事故や民家を荒らすなどの理由で、その多くは持ち主の同意のもとで殺処分されてしまった。そんな中で、浪江町の「希望の牧場」など、気概のある牧場主らが無駄死にさせまいと、懸命に命をつないでいる。
2014年、震災から3年後のペットレスキュー活動の現状
※TNR活動とは「T:トラップ(捕獲器で捕獲して) N:不妊手術(ニューターにして) R:リリース(元の場所に戻す)」という活動の名称です。
私たち動物レスキューは区域再編と道路情報に敏感に反応しながら活動している。現在は帰還困難区域、とくに国有化される予定の大熊町と双葉町からのレスキューが最優先されている状況だ。
家畜やイノシシなど野生動物は殺処分、犬や猫の多くは保護されたためで、犬はほとんど見かけなくなった(2013年12月、2頭保護されました!)が、猫はまだ潜んでいる。震災後に産まれた命が増えたものの、3年近く経った今でも飼い猫が見つかるケースも少なくない。私たちの給餌で命をつないでいてくれたと思うと、うれしさもひとしおだ。
ただし、イノシシやアライグマ、ハクビシン、カラスなどの野生動物に食べられてしまったり、これらの動物による民家への被害も問題になっていて、そのために動物ボランティアの給餌を快く思わない人もいないわけではない。
まだまだペット支援が必要な福島の今
富岡町でもペットを探し続けている帰還困難区域の被災住民が、給餌活動への正式な許可を求めて役場と交渉を始めていたりと、少しずつだが住民が声をあげ始めた。
また、飯舘村や葛尾村などでは住民の意識も向上し、動物ボランティアに対する理解も進んだ。今は連携をとりながらTNR活動を進めたり、給餌活動を続けている。
メディアに注目されなくなったためか、大手愛護団体のほとんどが福島から撤退し、現在は福島に拠点を置く小さな団体(主に個人が立ち上げた)と、限られた個人ボランティアだけが被災地に残された命を必死の思いでつないでいる。
多くの人にとっては、福島はもう過去の出来事かもしれません。でも、福島はまだ終わっていません。放射能汚染に晒されながら頑張って生きている命があります。それを助けようともがき続けている人たちがいます。
どうか、福島に目を向けて現状を知ってください。そして、少しでも協力してくれるとありがたいです。保護されたペットの一時預かり、新しい飼い主になるほか、後方支援、情報拡散など、遠方にいてもできることがたくさんあります。ぜひ、よろしくお願いします。
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