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この連載が救いに?【穴澤賢の犬のはなし】

少し前、あるイベント会場で長年に渡りブログやこの連載を読んでくださっているという女性と話す機会があった。そんな長いことありがとうございますと雑談していたときのこと。数年前、その方が犬を飼いはじめた頃に、犬が言うことを聞いてくれないことにすごく悩み、色々調べている中でこの連載を見つけて救われたという。

読者からの意外な言葉

誰かを救おうなんて高尚な思いで書いてはいないので、そう言われて驚いた。そこで「僕、なんて書いていました?」と聞いたら、どんなやんちゃな犬でも3才くらいになったら必ず落ち着くから大丈夫、という話だったらしい。全然覚えていないが、書いた気もする。なぜなら、それは経験上知っているから。

かつて思い悩んだ日々

先代犬の富士丸と暮らしている頃、破壊活動にどれほど悩んだことか。いくら叱っても、出かける度に何かが壊されている。防御するため、仕方なく玄関にゲートを設置して留守番時にはそこ閉じ込めるようにしたが、今度はそこにあったトイレシートをグチャグチャに噛みちぎるようになった。なぜこんなことするんだ、と帰宅する度にため息をついていた日々。
それも3才くらいになったら治まった。これは後になってわかったことだが、たぶん幼いころは運動量が足りていなくて、力があり余っていたのだろう。もちろん散歩は朝夕行っていたが、仕事も忙しく毎日2時間くらい散歩するのは無理だった。破壊活動にもちゃんと理由があったのだ。原因は私の方だったことに気がついたとき、本当に申し訳なく思ったものだ。

どんな犬も必ず落ち着く

そんな経験から、極悪破壊犬だった福助に対しても、多少は叱ったりしつつ「仕方ないか」と半分諦めて早く落ち着いてくれるのを待っていた。色々やられたが、結果的に今は何もしないタヌキになった。例外的に大吉は最初から手がかからなかったが、どんなやんちゃ坊主も落ち着くのは事実だ。原因や理由がどちらにあるかはケースバイケースだが、そのうちきっと折り合いがつく。それまで多少時間がかかるだけだと思う。
そういえば、少し前に黒柴を飼いはじめた税理士の奥さんが悩んでいたから、そんなの当たり前だと話したことを書いたが、あれ以降も手を焼いているらしい。この前は「本気で手を噛まれてすごく痛かったのがちょっとトラウマになった」というので「それ本気じゃないですよ。犬が本気で噛んだら縫うほどのけがになりますから。たぶん幼いからまだ甘噛みの力加減がいまいちわかってないんだと思います」と話したら、「たしかにそうかも!」と納得していた。
やっぱり最初は悩むんだろうなと思う。大丈夫、だいたいみんな通る道だから。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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