月に1度の恒例行事
わが家では、犬は家で洗うことにしている。先代犬の富士丸もそうだった。トリミングサロンに連れて行き、洗い終わった頃に迎えに行くのが面倒だからと家で洗っているうちに、もう慣れてしまった。
だいたい月に1度くらいの頻度のことではあるが、大吉と福助の2頭となると結構大変だし時間がかかる。嫁が洗う係、私が拭いてドライヤーで乾かす係と分担しても、午前中いっぱいかかる。
濡れると細くなり不幸な顔をする大吉と、濡れてもそれほど細くならない福助を順番に洗い、わしゃわしゃ拭いてドライヤーで乾かしていく。大吉は幼い頃からドライヤーは平気だったが、わが家に来た頃の福助は音と温風を怖がって逃げまくっていた。
シャンプー&ドライヤー&掃除
「逃げてもむだだから」とその都度捕まえて乾かしているうちに、今ではまったく平気になっている。なんだったらドライヤーをかけられながら、ちょっとウトウトしたりする。変われば変わるものだねぇ。
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洗って乾かすだけでも大仕事だが、それで終わりではない。ドライヤーで乾かしていると、毎回ふわふわした毛が大量に抜ける。軽いのでしばらく宙を舞い、あちこちに降り積もる。そしてテキサスの荒野を漂う枯れ草のような塊がいくつもできる。「そんな大げさな」と思うかもしれないが、多くの犬飼いは「そうそう」と頷いているはずだ。
掃除機をかけると再び宙に舞うだけなので、フローリングはホウキやハタキでかき集め、ラグは「ぱくぱくローラー」などで掃除していく。そして、自分が着ている服も抜け毛だらけでえらいことになっている。
あのときの経験から
だけど、それは全然嫌なことではない。なぜなら富士丸が突然いなくなった後、掃除しなくていい寂しさを知ったからだ。あれだけ毎日掃除してもまたすぐ抜け毛だらけになっていたのに、いなくなった途端、掃除が必要なくなった。以前なら考えられないが、何日床掃除しなくても、たいして汚れもしない。それが悲しくてたまらない。
あのとき、妙にガランとした部屋で感じた寂しさと悲しさから、日々じゃんじゃん抜け毛を生み出してくれる彼らの存在がありがたく思えるようになった。まぁ、掃除は楽じゃないんだけどね。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。