気管がつぶれ、呼吸ができなくなる原因不明の病気
気管は、呼吸の際に空気が通る管状の器官です。その気管が何らかの原因でつぶれていき、呼吸ができなくなるのが気管虚脱(きかんきょだつ)という病気です。原因はいまだにわかっておらず、治療法も確立していない難病とされています。
気管虚脱を発症して気管がつぶれると、気管の内側の粘膜が刺激を受けてセキが出ます。初期にはからゼキをすることが多く、徐々にセキの回数が増え、せきこむ時間も長くなっていきます。病気が進行すると、気管がさらにつぶれていき、呼吸するのも苦しく眠れなくなる犬も。通常は数年かけて病気が進行しますが、初期のセキがほとんどないまま、突然、重度の呼吸困難の症状が出る場合もあります。7~8才で症状が出る犬が多いですが、2~3才の若い時期に発症するケースもあります。
イラスト/フジマツミキ
エックス線画像で診断し、手術でつぶれた気管を広げる
気管虚脱はほとんどの場合、問診とエックス線画像により診断します。つぶれの程度によってグレード1~4までの4段階に分類しますが、現状では治すことも、進行を止めることもできません。そのため、つぶれた気管を広げるための外科手術がいくつか試されてきましたが、いまだにスタンダードな治療法は確立されていません。
症例写真提供/アトム動物病院動物呼吸器病センター
写真は、エックス線画像でグレード4と診断された犬の、手術前の気管の様子。この犬は呼吸をするのもやっとの状態でした。
症例写真提供/アトム動物病院動物呼吸器病センター
写真は、手術後はつぶれた気管が正常な円形に戻った様子。気管の外側から器具と気管とを糸で結ぶため、内側からは固定した糸が見えます。
重度の状態でも手術はできるのか?
手術ができるかは、じつは重症度ではなく、つぶれている部位によって判断されます。気管虚脱を発症した犬の多くは、首輪をつけるあたりの気管がつぶれています。このあたりの気管であれば、グレード4のような激しいつぶれ方でも手術はできます。しかし、気管が枝分かれして肺につながる気管支がつぶれている場合は、この手術を受けることはできません。もちろん、犬の体質や持病によって手術が行えないこともあります。
イラスト/フジマツミキ
いかがでしたか。気管虚脱は予防や内科的治療が困難な病気ですが、定期的にエックス線検査をして、症状が軽いうちに少しでも早く病気を発見してあげたいものです。万が一気管虚脱が発見されたら、いつまでも元気に走り回れるよう、手術も検討してみましょう。
参考/「いぬのきもち」2020年2月号『犬の現代病ファイル 気管虚脱』(監修:米澤 覚先生 アトム動物病院動物呼吸器病センター院長)
症例写真提供/アトム動物病院動物呼吸器病センター
イラスト/フジマツミキ
文/サトウ