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犬の「歯磨き」を毎日している人は約半数 ケアを怠るリスクを獣医師が解説
犬の歯磨きをしている飼い主さんは約8割
「毎日」と回答した人が約半数に
「その他」と答えた人は…
- 「気になった時なので時々」
- 「1カ月に1回」
- 「月に1回のトリミングでお願いしている」
- 「自分に余裕があり、気づいた時。高齢保護犬がいたときは、歯石がついておりマメに歯磨きもしていたが…」
- 「夜、あとでしようとして、そのまま寝てしまったりするなど、タイミングで日による」
- 「歯磨きガムを与えているだけで、ブラシで擦ったりはしていない」
- 「嫌がるのでたまにして、毎日歯みがきガムをあげてます」
- 「フード以外の物を食べた時」
気づいたときにだけ歯磨きをしてあげている、と答えた人もいました。
「愛犬の歯磨きは難しい」 約8割の飼い主さんが実感
歯磨きが難しく感じるワケについては、下記のような声が寄せられています。
犬が怒る、暴れるから
- 「大暴れする」
- 「歯ブラシが歯を磨くものでなく、おもちゃとして認識しているようで、私から取り上げて自分でかじり壊してしまうし、きちんとできていないこと」
- 「前歯や表面は磨かせてくれるが、奥歯の裏側はとても嫌がってなかなかうまく磨けない」
- 「かみかみしてくるので上手くいかない。歯みがきシートも1度飲み込んでしまったことがある」
- 「自分で口を開けていてくれないので、どんどん後ずさりして追いかける形になってしまう」
- 「口を触るだけで怒るのでできません」
- 「嫌がるので、二人がかりで一人が抑え込んでもう一人がその隙に磨く事しかできない」
- 「『歯磨きだよ』と言うと私の前に歩いてきてお座りするので、やる気かと思いきや……歯ブラシを入れると舌をベロベロ出して妨害。あまり長くやりすぎると嫌だと倒れ込んでしまいます。なので、今日は上の歯、明日は裏側など分けてやっています…」
ちゃんと磨けているのかどうかわからない
- 「歯ブラシでもシートでも問題なく磨けるが、奥歯の裏や歯と歯の隙間等の箇所が難しい。ちゃんと磨いているつもりでも、歯垢が落としきれずにいる」
- 「ブラシでは噛んでしまい磨けないので、シートタイプを使用してますが、奥のほうは指が入らずしっかり磨けない」
- 「どの程度磨けているかわかりずらい、磨く手加減がわからない」
愛犬に合う歯ブラシがどんなものかわからない
- 「お口が小さくて合う歯ブラシがなかなか見つからなかった」
【獣医師解説】犬の歯磨きを怠ることのリスクは?
「口腔内の環境は犬の体質による影響も多少はあると思いますが、歯磨きをできなければ食べかすが口の中に残りやすくなり、やがてそれが歯垢になり、最終的に歯石になります。
そもそも歯石が付きやすい場所は、歯垢が残りやすい歯のくぼんだ部分などが多いですが、歯石の表面は歯の表面よりもざらざらしているため、歯石が付いた場所にはますます歯垢が残りやすくなり、それが次の歯石になる悪循環が起こります」
「そうですね。そのように少しずつ層のように重なって大きくなった歯石が頬の内側に当たってさらに炎症を起こしたり、歯周ポケットの中に歯石が深く食い込むように付いて歯根を傷めてしまったりなど重度の歯周病につながり、最終的には治療のための抜歯が必要になることもあります」
歯周病でかわいそうな状態だった犬も
「歯周病で抜歯処置をする際に、麻酔をかけてまず口の中を調べたところ、歯の隙間に歯垢や歯石だけではなく、食べかすや犬自身の毛が大量に挟まって歯肉がひどく傷み、とても気の毒な状況になっていたことがあります」
「歯根や歯茎が傷んでいれば、強い痛みもあります。痛みがあれば、ますます口を触られることを嫌がり、拒むようにもなりがちです。健康なうちから日々のお手入れとして、前向きに口腔ケアをしてあげることが大切です」
犬の理想的な歯磨きの頻度は?
「最も理想的な歯のケアは、食べ物のかすを口の中に長時間放置しない対応です。その点からは、歯磨きは毎食後するのが適切だといえます。
ただし、歯磨きのように日々繰り返し続けることが必要なお手入れについては、愛犬が負担なく受け入れてくれることと、また飼い主さんの負担が大きくなりすぎないことも、とても大切です。
日々の習慣として続けやすくすることも考えると、1日1回、愛犬が受け入れてくれる範囲で毎日お手入れをするなどの方法がよいでしょう」
歯磨きが苦手な犬へのお手入れの考え方
「長時間の手入れが苦手な犬の場合は、1日ごとにお手入れの場所を変えてローテーションをするような方法がよいかと思います。たとえば、今日は上の歯を重点的に、明日は下の歯を重点的に、というペースを作るなどの工夫を取り入れるのも、無理なく続けやすくするコツのひとつです」
「歯垢の原因になる食べ物のかすは、歯の隙間にとどまりやすいです。歯の隙間の食べかすはガムやシートでは完全に取り除くことはできませんが、まったく何もしないよりは、多少の効果が期待できると思います」
「お手入れ中に舌をベロベロ出してしまいがちなコや、シートをカミカミしてしまうコは、苦手意識から悪気なくそういった行動をしてしまっているのかもしれませんね。口の周囲を触られたり歯磨きを嫌がったりするのは、犬本来の行動としてはむしろ自然な反応です。
口の中は、体の中でも敏感な粘膜で覆われた弱い場所なので、触られることを本能的に嫌がりやすい傾向があります」
「顔の前や正面から手が近づいてくるのは、犬にとっては怖く、苦手なことと感じやすい飼い主さんのしぐさです。つい避けようと後ろに下がってしまうこともあるでしょう。
愛犬が歯磨き中に後ずさりしてしまう場合には、愛犬の側面や背中側に座って愛犬の体を抱えるように支え、前に手をまわしてのぞき込みながら口のお手入れをするのもひとつの方法です」
「無理に押さえつけて歯磨きするなどの方法は、愛犬のストレスが心配です。これから先、愛犬に我慢の限界がきてしまうと、急に噛むようになって受け入れなくなるなど飼い主さんとの関係がうまくいかなくなることもあります。押さえつける行為は、できれば避けるほうがよいでしょう。
歯磨きが苦手な犬への工夫として、初めはおいしいフードなどのご褒美を併用しながら、まずは口の周囲を触ってみましょう。そして、上手に触らせたらたくさん褒めてあげることから始めてみてください。
口を触ったときに嫌な気持ちになりにくく、『楽しいこと』と感じやすくなるような工夫もしながら、少しずつ慣らすことも大切です」
歯ブラシ選びのコツは?
「歯ブラシについては、毛が柔らかめなものを選びましょう。そして、ヘッドは口の奥まで入るよう大き過ぎないもの、グリップは飼い主さんが握りやすい形のものを選んでいただくのがよいと思います。
可能であれば犬用の専用品から選んでいただくのがより安心ですが、愛犬の口の大きさや使いやすさなどの点で、程よいものが見つからない場合もあるでしょう。その場合は、かかりつけの動物病院に相談し、安全面に配慮しながら人用のものを代用することも、あわせて考えてみるとよいでしょう」
飼い主さんが理解したい歯磨きの重要性
「歯や歯茎を悪くするのはもちろん健康面でさまざまな心配もありますが、口の中のトラブルは痛みや違和感なども強く感じやすいため、愛犬にとってもつらいことです。
とくに、高齢になってから重度の口腔トラブルが起こると、体に負担なく積極的にできる治療は限られてしまう場合も少なくないため、つらい症状をしっかり改善できないまま、その後の日々を過ごすことになる場合もあります。
これは、見守る飼い主さんとしても、つらい状況だと思います。愛犬が若いころから口のお手入れをする習慣を持って、愛犬の健康を守りながら、末永く心地よくすごせるようにしていただければ何よりです」
※写真は「いぬ・ねこのきもちアプリ」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください
取材・文/sorami
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