先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
福助は引き戸を開けられる。最初は、鼻先でクイッと開けていたが、そのうち前足を使い始め、今では人間と同じ動作でガラッと開けるようになった。夏場に出かけるときは2階のリビングを締め切ってエアコンをかけていたが、留守の間に必ずといっていいほど意味なく開けられるので、冷気が1階にダダ漏れになり冷房効率がえらく悪い。わが家の引き戸は吊るタイプなので、わずかな力で簡単に開けられるらしい。
開けっぱなしは困る
留守番中のウェブカメラの証拠画像
お前らが少しでも快適に過ごせるように閉め切ってエアコンをかけているのに、と思うが問答無用で開けられるので、もうあきらめた。仕方なく、夏場は1階の仕事部屋のエアコンはつけず、2階から降りてくる冷気を頼りにしている。なぜリビングのエアコンをかけるのかというと
この前書いた 通り、彼らは仕事部屋にいたりいなかったりするからだ。
夏場は開けっぱなしにしておけばいいが、冬場は困る。暖房をかけた仕事部屋のドアを開けると、温かい空気が逃げていき、冷気が忍び込んでくるからだ。しかし彼らは気分次第で来る。そのときにドアがカチッと閉まっていたら入れない。だからドアの上に段ボールを挟んで、しっかりとは閉まらないよう工夫している(雑だけど閉まらなければそれでいい)。
これを利用して、大吉と福助は気まぐれに入って来る。仕事部屋は開き戸だが、こちらは鼻でちょんと突けば簡単に開く。だが、決して閉めることはない。開いたままにしておくと冷気が入り放題なので、その度にドアを閉めなければならない。
いつの間にか開けられるようになった福助に学んでほしいこと
それはいいとして、驚いたことに福助はいつの間にか、閉まった開き戸を室内から開けられるようになっていた。引き戸と同じように前足を使い、クイッと器用に開けるのだ。妙なことの学習能力が高い。ちなみに大吉は、引き戸も開き戸も開けない。開き戸を鼻先でちょんと押して入ってくることはあるが、前足は使わない。
大吉も前足をよく使うタイプだからできるはずだが、「もっとなでて」など自分の意思を示すときだけで、ドアを開けることに前足は使わない(いつも福助に任せている)。そこは謎なのだが、遠慮でもしているのだろうか。
いっぽう、福助はおかまいなしで開けまくる。そのため、パソコンに向かって仕事に集中していると、いつの間にか彼らがいなくなっていることがある。なぜ気がつくかというと、冷気が入ってくるからだ。「さぶっ」と思って振り返ると彼らの姿はなく、ドアがバーンと開きっぱなしになっている、なんてことがよくある。
「引き戸も開き戸も関係なく移動するとはスゲーなあいつ」と関心しつつ、毎回ドアを閉めている。頼むから閉めることも学習してくれ。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」 というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。