先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
連休、山の家で過ごしているとき
ご近所のカールの飼い主さんと嫁が、近くに気になる雑貨屋があるけど犬は店内に入れないと話していた。「ならカールをうちに置いて2人で行ってくれば?」と言うと、2時間ほどで戻ると出かけていった。
犬同士の自由な留守番
カールとは何度も会っているから、大吉はもちろん犬ミシラーの福助も全然平気だ。私も家の片付けなどやりたいことがあったので、3頭とも自由にさせていた。
しばらくすると、カールは窓の外をじっと眺めていた。普段はお気楽で能天気な性格だが、やはり飼い主の姿が見えないとさびしいのだろう。その哀愁漂う後ろ姿に、かわいいやつだなぁと思っていた。
飼い主の帰りをじっと待つ
1時間ほど経った頃、外を眺めていたカールが突然「お母ちゃん帰ってきた!」とばかりに激しく吠え出した。「もう帰ってきたの?早くない?」と思いながら外を見てみると、ただ見知らぬ車が通りすぎただけだった。
「違うじゃん、カール」と言うと、またシュンとしてまた外を眺め始めた。私は気にせず、部屋を片付ける。15分ほどすると、またカールが「今度こそお母ちゃん帰ってきた!」とばかりに激しくしっぽを振りながら吠え出した。
そしたら大吉と福助も「そうなの?」と窓際に行き、3頭揃って吠えている。「本当か?」思いながら私も窓際に行って確かめてみると、ただ車が通りすぎただけだった。ちなみに家の前は道路の先は行き止まりで、登山口くらいしかないから、普段ほとんど車は通らない。それにしても、君らの聴力なら飼い主の車と他の車の音の違いくらい分かるだろう。そもそも見た目が違うんだから。
その後、カールは何度も吠えていたが、どうせ車が通っただけだろうと相手にしなかった。情けないことに、その度に大吉も福助もカールと一緒になって吠えていた。
実際にご近所さんが帰ってきたのはそれから1時間以上後だったが、その頃カールは吠え疲れてウトウトしていた。大丈夫か、君たち。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。