犬がかかりやすい耳の病気「外耳炎」。犬がかかる耳の病気で、一番多いのが外耳炎だといわれています(※1)。また、外耳炎のハイシーズンは梅雨先で、蒸し暑い時期に発症しやすい病気です。
そこで今回は、外耳炎という病気の特徴や外耳炎を発症する原因などについて、獣医師の平野翔子先生に伺いました。
外耳炎ってどんな病気?
犬の耳には、外耳(耳介・垂直耳道・水平耳道)、中耳(鼓膜・耳小骨・鼓室胞・耳管)、内耳(蝸牛・前庭・半規管)と呼ばれる部位があります。外耳炎とは、耳の入り口から鼓膜までの外耳が、なんらかの原因によって炎症を起こす病気です。
外耳炎は、片耳だけ発症することもあれば、両耳ともに発症することも。慢性化して炎症が中耳や内耳まで広がると、外科手術などの大がかりな治療が必要になるケースも少なくありません。
外耳炎は梅雨先から発症しやすい!?
皮膚や耳を中心に診察している獣医師の平野翔子先生によると、暑い時季は「今日は外耳炎の犬しか診ていない」という日があるほど、外耳炎を発症する犬が増えるのだとか。その理由は、梅雨頃になると蒸し暑くなり、犬の耳も蒸れやすくなるから。“蒸れ”は外耳炎の直接的な原因ではないものの、発症リスクを高める要因。そのため、梅雨以降の暑い時期には、外耳炎に気を付ける必要があるのです。
“蒸れ”のリスクが高い犬
・垂れ耳
・短頭種など、先天的に耳道が狭い
・トイ・プードルやシー・ズーなど、耳毛が密に生えている
・アメリカン・コッカー・スパニエルなど、耳の分泌腺が多い
・水遊びをする
・不適切な耳洗浄を受けた
外耳炎の直接的な原因になる病気は?
先ほどご紹介したとおり、“蒸れ”は外耳炎の発症リスクを高める要因ではありますが、発症にはおおもとの原因があることがほとんどです。ここでは、外耳炎発症の原因になりやすい病気などを5つご紹介します。
アレルギー性皮膚炎
外耳炎の原因でもっとも多いのが、アレルギー性皮膚炎です。皮膚が敏感なので、耳の中の汗などが刺激になり、外耳炎を発症することがあります。
脂漏症
皮膚がべたつき、皮膚のターンオーバーが乱れがちになります。そこに蒸れが加わると、耳道の環境が悪化して外耳炎が発症しやすくなるようです。
ミミヒゼンダニの感染
耳の中にすみつくミミヒゼンダニが、皮膚の中にトンネルを掘って寄生し、炎症と強いかゆみを引き起こします。黒い耳アカが大量に出るのも、特徴のひとつです。
内分泌の病気
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などがある犬は、皮膚の免疫力の低下や脂腺の性質の変化などが起きて、外耳炎になりやすくなります。
耳に入った異物
耳に小石や植物などが入ると、それが刺激になって外耳炎を発症することがあります。特に、夏から秋に多く見られるエノコログサ(通称:ネコジャラシ)やススキなど、穂先に突起があるタイプの植物は要注意です。
外耳炎は珍しい病気ではありませんが、悪化すると治療が大変になってしまうため、甘く見てはいけません。愛犬の耳に異常が見られたら、早めに動物病院を受診して、適切な治療を受けましょう。
お話を伺った先生/平野翔子先生(ぬのかわ犬猫病院獣医師 日本獣医皮膚科認定医 日本獣医皮膚科学会、アジア皮膚科学会所属)
参考/「いぬのきもち」2023年6月号『『いぬのきもち』読者の3.5人に1人が経験者 梅雨どきからかかりやすく再発も増える やっかいな外耳炎と決別!!』
文/東里奈
※1 犬の耳の疾患による保険金請求の約86%(出典:アニコ『家庭どうぶつ白書2018』)
記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。