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多頭飼いに向かない犬の特徴 知らないと後悔するケースも…
でも、多頭飼いを安易に考えると、結果的にワンちゃんたちを幸せにできないこともあるのです。
今回は、そもそも「多頭飼いに向かないワンちゃんはどんなタイプか」を獣医師が解説! さらに、獣医師が実際に見た「多頭飼いで失敗した実例」も教えてもらいました。
多頭飼いを決断する前に、飼い主さんはなにを考えるべきか。気になる疑問や不安を解消していきましょう!
多頭飼いに向かない犬の特徴
「ありますね。多頭飼いに向かないワンちゃんの特徴は、大きく4つに分けられます」
①興奮しやすい、攻撃性がある、問題行動などを抱えている犬
「興奮しやすかったり、攻撃性のある犬は、ほかの犬との生活が困難で、新しく迎えた犬にケガを負わせてしまうこともあります。また、止めに入った飼い主さんがケガをすることもあります。
このようなコたちは最初から多頭飼いは考えず、1匹で生活させたほうがいいでしょう」
②過度に臆病な犬
「過度に臆病な犬の場合、多頭飼いによってストレスをためて我慢した生活を強いられるか、もしくは臆病さから攻撃に転じる可能性もあります」
③年齢が離れすぎている
「たとえば先住犬と10歳以上離れて子犬が来た場合、先住犬はシニアで静かな生活を望む年齢になる頃ですから疲れてしまう場合もあります。
逆に、若さが刺激になることもありますが見極めが必要です」
④甘えん坊で、飼い主さんへの依存心が強い犬
「飼い主さんのことが大好きなコは、多頭飼いによって愛情が分散することから、ほかの犬との生活を望まないコもいます」
愛犬が多頭飼いに向くか、向かないかの判断法
「一番分かりやすいのは、散歩のときにほかの犬に対して友好的かどうかでしょう。どの犬に対しても吠える、うなるようなコは多頭飼いには向かないかもしれません。
そんな犬でも『この犬だけとは仲がいい』というような犬友達がいるのであれば、多頭飼いできる可能性はありそうです。
一緒に生活できそうな犬を探してみるのもいいと思います」
1匹で飼ってあげるのが望ましい犬のタイプ
「最初に記した、『興奮しやすくて攻撃性がある、問題行動などを抱えている犬』に当てはまるコたちですね。1匹で生活していても、おそらく飼い主さんの手に余ることがあるはず。
それを解決できないまま新しい犬を迎えたとき、先住犬の状態が悪化したり、新しい犬とケンカになったりと、飼い主さんの負担も増える可能性があります」
「『今のコが大変なので、新しいコを迎えれば変わってくれるのではないか』と相談されることがありますが、変わる可能性が低いと考えられる場合にはおすすめできません。
新しい犬が先住犬のよくない行動を真似してしまい、飼い主さんの苦しみが倍以上に増え、事態が悪化することも考えられます」
獣医師が激白! 実際にあった多頭飼いの失敗例
「先住犬と新しい犬のケンカが絶えず、ケガをした犬を連れてたびたび病院に来ていた飼い主さんがいました。
また、どうしても同じ空間で暮らすことができずに、完全に部屋を分けていた方がいます。犬たちが顔を合わせないよう、食事も散歩もすべてにおいて時間差で行い、苦労されていました。
悲しいですが、ほかのお宅に預けられたり、どちらかの犬を手放す結果となったケースもありましたね」
多頭飼い失敗で、犬たちへの影響は……
「多大なストレスがかかり、楽しくない、我慢した生活を強いられます。犬同士のケンカが始まったり、問題行動を引き起こすこともあるでしょう」
「そうですね。食事や散歩、ブラッシング、歯磨き、シャンプーなど、日々のケアには時間と手間がかかります。
また、排尿・排便、元気や食欲など、飼い主さんが1匹1匹をきちんと観察する必要があります。これらを怠ると、犬の病気の発見が遅れる原因になります。
診察中、多頭飼いの飼い主さんから『ほかにも犬がいるから、このコにお金をかけられない』と言われることがあります。病気でも必要な治療を受けられないことがあります」
多頭飼いを決断する前に、事前に確認すべきこと
「まずは、先住犬が多頭飼いに向くかどうかを見極めましょう。最初に説明した、多頭飼いに向かない4つのタイプに当てはまらないかどうか、確認してください。
次に、ご自身が多頭飼いしたい理由を考えてみるといいでしょう」
飼い主さんが多頭飼いをしたい理由はなに?
「先住犬との別れが来たとき、ペットロス予防のために支えてくれるコがほしい。家族を増やして、楽しく暮らしたい。気になるコと出会ってしまった……などいろいろあると思います。
次のコを迎えるのは飼い主さんご自身の責任です。たとえば、『先住犬の遊び相手に』など『先住犬のため』という理由では、望むような結果が得られなかったときに、犬も飼い主さんも幸せになれません。
ご自身が新しいコを迎えて愛せる覚悟があるかどうかを、自問自答してみてください」
多頭飼いでは金銭面も考えて!
「それから、フード代、フィラリア予防やワクチン代、トリミング代、その他医療費などなにかとお金がかかります。10年以上犬と生活する中で、ご自身が病気をしたり生活が変わる可能性もあります。
そのようなときでも、犬を飼い続けるだけのお金については考えていますか? とくに動物病院に入院・手術となったら、数十万単位のお金が必要になります。
多頭飼いで犬が同時に病気になることだってあります。金銭的なことも考えてみましょう」
災害時に何匹なら一緒に連れ出せる?
「また、災害時などで避難する場合もあります。何匹ならご自身で一緒に連れ出すことができますか?
そのときは、犬のフードなど必要品も持ち出すことになりますから、ご自身も犬も安全に避難できるかどうかを考えてください。
これらを踏まえて、多頭飼いが許される状況であれば、先住犬と相性の合いそうなコをぜひ迎えてあげてください」
多頭飼い成功の秘訣は、先住犬を優先すること
「多頭飼いにはもちろん犬同士の相性も大切ですが、飼い主さんの毅然とした態度も必要になります。
新しいコがかわいくてかまってあげたい気持ちを抑えて、基本的にはなんでも先住犬を優先させて、自尊心を保ってあげることが重要です。
うまくいくと新しい犬の面倒を見てくれたり、ときにはしつけをしてくれて飼い主さんを助けてくれることだってあります。
多頭飼いは、先住犬の新しい一面を見られるチャンスでもあります。幸せに暮らしている家庭もたくさんありますから、参考にしていただけたら幸いです」
※写真はアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」にご投稿いただいたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/凜香
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