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「オアズケ」を教えるのはやめたほうがいいワケ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.106
昔は犬を飼ったら、オテやオスワリのほかに、「オアズケ」を教えるのが当たり前でした。ところが現在、オアズケは不要とされています。西川先生によると、不要どころか、教えると弊害が生じるため、教えないでと警鐘を鳴らします。オアズケが必要ない理由、弊害とはどんなことでしょうか(編集部)。
人間の子どもたちの教育やしつけはもちろんですが、犬に対するそれらも同様です。
2000年代半ばから、犬に求める姿は大きく変わりました。
にもかかわらず、教える内容、教え方が、昔のままの(1960年代の)ものが少なくありません。
Vol.52で取り上げた飼育環境も、ある意味そう。
サークル内にトイレと寝床スペースを用意するという飼育環境は、畳の部屋が多く、基本犬は抱いているという、1960年代からマルチーズのブームから始まった小型室内犬を室内で飼い始めた時代の飼育環境です。
この飼育環境では、リビングを自由にさせるといった、家庭犬(=コンパニオン・ドッグ)としての姿にはなりません。
リビングに放すとカーペットの上で排泄をしてしまい、いつまでたっても犬を自由にさせられないからです。
同様に昔ながらの、今では不要なしつけ項目がいくつかあります。
代表的なそれは、オアズケです。
番犬の時代のしつけの定番
試しに犬のそばに肉を投げてみる。もし、その犬が肉を喜んで食べるようであれば、数日間その家に通い、肉を投げ入れることを続ける。そうすることで、犬は泥棒に手懐けられてしまう。
泥棒に手懐けられることのないパーフェクトな番犬を望むのであれば、やるべきことがいくつかあった。
まずは、中に苦いとか辛いとかの犬が嫌いな味の何かを包み込んだ肉団子を作り、他人に投げてもらうこと。
次に、飼い主が「よし」などの声がけで許さない限り、食べ物を口にしないように教えること。
すなわち、オアズケは飼い主以外が「よし」などの声がけしても食べのものを食べないこと、それを教えるために必要だったのです。
番犬ではない家庭犬には、いずれも必要のないことです。
もちろん、興奮している状態でフードをあげるわけにはいきません。食器を手にしオスワリしたのなら、オアズケなどさせずに「どうぞ」と声がけして、食器を置きフードをあげるだけで十分といえるのです。
家庭犬のトレーニングの弊害となる「オアズケ」
オアズケはフードを目の前にするとオスワリの姿勢を(飼い主が許すまで)崩してはいけないことを習慣づけていきます。
フードを握り込んだグーの手に鼻をつけてくる、それを利用して犬を好ましい行動へと導き(マグネットによる誘導という)、報酬(握り込んだ手の中のフード)を与える。家庭犬のトレーニング、ほめてしつけるトレーニングの基本は、こうした流れが基本となります。
しかし、オアズケを教えている犬の場合、一旦オスワリしてしまうとフードを握り込んだグーの手に鼻をつけ動こうとしない。
オアズケで待ってしまうのです。動くとフードがもらえないということを教えているからです。
特にフセへの誘導ができなくなる。
首を下げるだけで、フセの姿勢をとろうとしないのです。
必要な状況でのマテができることが重要
フードを目の前にせずに必要な状況でのマテ。
それはグーの手に集中することでまずは形作っていきます。グーの手に集中するその前提は、フードを握り込んだグーの手に集中できること。フードを握り込んだグーの手に集中する前提は、フードを握り込んだグーの手で犬を誘導できること。
オアズケはフードを握り込んだグーの手についてくることを阻害するわけですから、オアズケを先に教えることは必要な状況でのマテを教えることを阻害する。そういう結果となるのです。
オアズケ、教えるべからず。
ちなみに上記の必要な状況でのマテができるようなれば、いわゆるフードを目の前にしたオアズケは、させようと思えばいくらでもできるようになりますよ。
まぁ、もっともさせる必要はないのですけどね。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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