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【獣医師が教える!】チワワの寿命と長生きのコツ
純血種のなかで最も小さい犬種チワワ。その小さな身体、つぶらな瞳、人懐こい性格は、人々を魅了してやみません。国内の飼育頭数においては、トイ・プードルについで2位に位置づけている人気犬種です。今回は、チワワといつまでも楽しく、長生きしてもらえるポイントについてご紹介します。
滝田 雄磨 先生
SHIBUYAフレンズ動物病院院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
東京農工大学農学部附属動物医療センター皮膚科研修医
ふく動物病院勤務
SJDドッググルーミングスクール講師
●資格:獣医師
●所属:日本獣医皮膚科学会/日本獣医動物行動研究会
1)チワワの平均寿命
2)チワワを外飼育するときの注意点
外敵に注意!
体温に注意!
チワワは品種改良された犬種ですが、もともとの原産国はメキシコです。メキシコは暑い地域で、チワワはその地域で順応する手段として、身体は小さく、体温を下げやすい大きな耳を持っています。そんな身体であるため、チワワは寒さに弱い傾向があります。寒さを凌げるような設備を用意することはもちろん、国内でも特に寒い地域では、チワワの外飼育は避けたほうが良いでしょう。
3)チワワの代表的な病気
1.心臓病
■僧帽弁閉鎖不全症:
僧帽弁(※1)が加齢などの理由でゆるくなり、しっかりと閉じきらなくなることを僧帽弁閉鎖不全症といいます。弁(※2)は逆流を防ぐためのものですから、閉鎖不全が起こると、血液の逆流が起こります。僧帽弁の逆流が起こると、左心房(※3)、左心室(※4)の両方に負担がかかります。
※1:僧帽弁
心臓には4つの部屋があります。それぞれの部屋には、左右と房室を組み合わせた名称がついています。全身から還ってきた血液を受け入れる右心房。その血液を肺へ送り出す右心室。肺から還ってきた血液を受け入れる左心房。その血液を全身へ送り出す左心室の4つです。これらのうち、左心房と左心室を隔てている弁が、僧帽弁です。
※2:弁
弁とは、血液の逆流を防ぐものです。血流が力強い動脈には弁がありませんが、静脈や心臓の中にみられます。静脈にある弁は、四肢で特によく発達しています。心臓の中の弁は、血液循環において特に重要な働きをしており、心臓が単純な収縮運動をするだけで複雑な血流を生み出すことが出来ているのは、このためです。
※3:左心房
左心房のきもちになってみると、肺から還ってきた血液に加え、左心室から逆流してきた血液も受け入れることになります。すると、受け入れられる血液量が限界を超え、次第に膨らんでいきます。
※4:左心室
左心室のきもちになってみると、全身に血液を送るために一生懸命収縮しても、血液の一部が僧帽弁の穴から左心房へと逃げてしまいます。さらに、左心房へ逃げた血液は、次の拡張期にまた左心室へ入ってきます。この逃げた血液が加わった分、次の拡張期に左心室に入ってくる血液の総量は多くなります。その結果、左心室が一度に扱う血液の量が多くなり、左心室は徐々に大きくなっていきます。これを、容量負荷による左心室の遠心性肥大といいます。
■僧帽弁閉鎖不全症の予後:
病気が進行し、左心房にかかる圧力が大きくなると、肺静脈を通して、肺の血管にも圧力が加わるようになります。肺の血管に圧力が加わると、肺の血管から肺の中へと血液中の水分が漏れ出てきます。その結果、肺水腫を引き起こします。
肺水腫は命にかかわる緊急の疾患です。心臓病の犬が呼吸困難となり鼻や口から泡を出していた場合は早急な治療が必要です。
■心臓病への備え:
心臓病は外科手術を除いて、基本的には完治を望むことは出来ません。心臓薬を使い、心臓の負担を減らしながら上手に病気と付き合っていきます。
ここで大切なポイントは、心臓病の治療を開始するタイミングです。以前は、咳や運動不耐などの症状が出てから治療を開始する方法も取られていましたが、最近では比較的早期から始める治療の方が、治療の成果がよいというデータが出ています。また、チワワを含むいくつかの犬種では、他の犬種とくらべて心臓病の進行が早い傾向があります。1年前の健診では全く異常がなかったのに、気づいたら心臓病が進行していたというケースもよくあります。高齢になってきたら、年に3回くらいは健診を受けたほうがよいでしょう。早期発見、早期治療、定期健診が寿命に大きく関わってくるのです。
また、肥満は心臓に負担をかけます。肥満気味のチワワは特に注意してください。
2.気管虚脱
■気管虚脱とは:
呼吸するときの空気の通り道である気管は、気管軟骨という軟骨が連なって支えています。気管軟骨はアルファベットのCのような形をしており、その内側を空気が通ります。この軟骨が柔らかく、潰れやすくなる病気を気管虚脱といいます。喉を圧迫したときに出る乾いた咳が、特徴的な症状です。
先に述べた心臓病とも関係があり、病気が進行して大きくなった心臓は、そのすぐ背中側にある気管を物理的に圧迫します。すると、気管が弱い子であった場合、気管が潰れ、咳をするようになります。咳がよく出る場合は、心臓も含めた検査をしてもらいましょう。
■気管虚脱で気をつけること:
気管虚脱は体質によるものであるため、発症を防ぐためにできることはほとんどありません。悪化させないためにできることを意識して、生活していくことが大切です。
気管虚脱と診断されたら、首輪はなるべく避けましょう。喉に負担がかからないよう、胴輪を使うようにしましょう。また、肥満はさらに呼吸がしづらくなり、症状を悪化させます。命にかかわる病気です。しっかりと体重管理をしましょう。
3.膝蓋骨脱臼
しかし、小型犬では、生まれつきの身体の構造が原因で、この膝蓋骨がよく内側に脱臼してしまいます。軽度の場合は、脱臼してもすぐにもとの位置に戻ります。しかし、重症化してくると、脱臼したままの状態となり、本来とは違う位置で骨と擦れるため、炎症が起こり、痛みを伴います。
軽度の場合はサプリメントや体重減量をすることで、ある程度コントロールすることが可能です。痛みをともなうようになったら、鎮痛薬も使って治療します。それでもコントロールできない、足を挙げっぱなしにするような場合は、外科手術を視野に入れた治療を検討します。
直接命に関わることは少ない病気ですが、歩行するだけで痛みをともなうようになれば、生活の質が著しく低下します。それがもとで運動不足となれば、健康も損ないかねません。適切な治療、ケアを心がけましょう。
4)高齢チワワへの配慮事項
1.気温の管理
家の中にいても、油断はできません。飼い主が寝た後や出かけているときに、暖房器具を切っているケースをよく聞きます。高齢のチワワでは、それが命取りになることもあるので、充分に注意しましょう。
外で散歩する場合は、さらに注意が必要です。夏には熱くなったアスファルトによる熱中症の危険性がある一方、冬のアスファルトは驚くほど冷たくなっています。その影響もあり、地面に近いところの空気は、われわれ人間が過ごしている高さの空気より冷たくなっています。高齢のチワワは無理に外で散歩させないように注意しましょう。
2.体重の管理
認知症の発見と見取り
以下の特徴がひとつでも該当したら、認知機能不全を疑います。
● 壁や床をぼんやりと見続ける
● なじみのある人や動物に対する認識が変化する
● ものや家具の後ろで動けなくなる
● 壁や家具に向かって歩き続ける
● 水入れのところで立ち止まっている
● 不適切な排泄の頻度が増加する
● 落としたフードを探すのが難しい
● 夜間に頻繁にうろつきまわる
● なでられたり触られたりするのを避ける
● 新しい行動を覚えるのに時間がかかる
● 何もないまたは理由がわからない吠え
認知機能不全は残念ながら進行性の疾患で、完治は望めません。しかし、脳に刺激をあたえるようなリハビリや、サプリメントで進行をやわらげることができます。
最も悲しいことは、認知機能不全でいままで出来ていたことができなくなってしまった子を、飼い主がしかってしまうことです。犬猫にも認知機能不全があることを知り、おかしいなと思ったら動物病院で診断してもらいましょう。
3.定期健診の受診
5)老後だからこそ楽しく過ごす
また、例え高齢になって病気になったとしても、悲観的になりすぎてはいけません。飼い主が悲しい気持ちで接すると、愛犬にも悲しい気持ちが伝わってしまいます。大変なときこそ、たくさん褒めてあげてください。
病気になってしまったら、飼い主も病気を理解し、治療を一緒に楽しくしてあげることが、愛犬にとっても飼い主にとってもおたがいの幸せにつながると考えています。
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