先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。
新型コロナに感染した。1年以上前からいつ感染してもおかしくないなと思っていたが、ついに来たかという感じだった。そこで参考になるかならないかは分からないが、わが家のケースと気づいたことを書き留めておこうかと思う。
発症前後で対応したこと
8月4日の夕方、妻から発熱したかもしれないというメールが届く。帰宅後、検温すると38.5度だったので、コロナ外来でPCR検査を受け付けている病院を探し回って予約できたのが翌日の17時。症状は発熱だけだった。
この時点で、大福もいるから2人で倒れるわけにはいかないと、別行動することにする。しかし発熱している妻に運転させるわけにも行かず、山へ避難するのは検査後にして、頻繁にうがいなどをする。
5日の夕方、病院でのPCR検査の結果は陽性。自宅療養中の食材は事前に買い込んでおいたので、妻を残し、私と大福は山へ移動。5日の23時山の家の到着。濃厚接触者なので、私もしばらく山で自主隔離するつもりだった。
これまで妻が風邪やインフルエンザにかかっても私に伝染ることはなかったので、大丈夫じゃないかと思っていたが、6日の夕方になり喉にかすかな違和感が。夜になると、少し熱があるような気がした(山の家には体温計がなかった)。とりあえず早く寝るが、翌朝(7日)起きると全身がだるく発熱しているのが分かったので、抗原検査キットで確かめると陽性。病院でPCR検査を受けるまでもなく、コロナ確定である。
療養中に感じた大福の気遣い
こうして、「大福のためにも2人で倒れるわけにはいかない」と動いたはずなのに、鎌倉・腰越の自宅では妻が、山の家では私が倒れてしまう。
ここから急激に体調が悪化し、とても辛かった。症状としては寒気とだるさくらいなのだが、どちらもひどくて動けないほどだった。薬もないし、病院へ行こうにも大福を置いていけないし、そもそも運転できる状態ではない。だからひたすら寝るしかなかった。
私がいつもやる発熱したときの対処としては、厚着して寝る、汗をかいたらタオルで拭いて着替える、そして頻繁に水分補給をする、効果があるかどうか分からないがそれくらいしかできない。が、パーカーを重ね着してもなぜか汗をかかない。寒気が増す。意識がもうろうとしてくる、という状態になる。なぜか時間の感覚も曖昧になり、しばらく経ったと思ったのに15分くらいしか経ってないという奇妙な感覚になる。
それでも大福に缶詰を用意したり、散歩の時間になると、ドッグランに出したり、そこだけは別回路で動けた。
しかし後はひたすらベッドに倒れて動けない。体温が異常に高いのに、寒い。いくら待っても汗をかかないので、冬用のインナーを引っ張り出して何重にも着込む。すると、ようやくうっすら汗が滲んできたので、着替える。また布団をかぶり横になる。汗をかいたら着替える。ひたすらそれを繰り返す。あとはベッドの脇においたスポーツドリンクを飲めるだけ飲む。大福もベッドにいたが、「どうしたんだろう」という顔で落ち着かないようすだった。寝たのか寝ていないのか分からない状態が続く。そしてこれが一晩で着替えた量である。
8日朝になると、熱が下がっていた(感覚的に)。こうすればいいという話ではなく、私の場合こうするしかなかったというだけの話である。
ただ、注意した方がいいと分かったことがある。熱中症や脱水だ。とにかく寒気がひどいので、あの状態だとまずエアコンはつけない。とはいっても気温は高いので、そのままいたら熱中症になる、もしくは脱水状態になるだろう。山の家は標高1400メートルほどなのでクーラーが必要ないくらい涼しいから結果的に良かったが、もし今後発熱したら、意識的に水分補給はした方がいいと思う。
さて、平熱には戻ったが、喉が痛い、食欲は一切ない、全身がだるい、という症状は続いていた。ずっとベッドでだるそうにゴロゴロしていたので大福は暇そうだったが、「遊ぼうよ!」とか「どこかへ行こうよ!」と催促してくることはなかった。散歩やゴハンといったことはどんなに辛くてもできたが、彼らも何か様子がおかしいと気遣っているようだった。
そしてちょっとだけ体力と戻ってきてから、大福と遊んだら、めちゃくちゃ嬉しそうだった。そして、ようやく文章を書く気力が戻ってきたので、今これを書いている(8/10 13:23)
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から
「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。