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「震災で愛犬を亡くしても、その悲しみを誰にも言えなかった」被災者に寄り添うチームうーにゃんの活動を聞いた

ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。

今回は、不遇な状況に置かれた動物をレスキューする「チームうーにゃん」を結成した画家・絵本作家のうささんの活動について紹介します。

1回目の記事|すべての命を大切にして守っていくことが「チームうーにゃん」の信条

「震災で消えた小さな命」のためにできること

左/動物をレスキューする「チームうーにゃん」代表のうささん。右/うささんの活動を支える妙子さん。東日本大震災で母親と愛犬を津波により亡くされ、その体験をうささんが絵本に記しました
左/動物をレスキューする「チームうーにゃん」代表のうささん。右/うささんの活動を支える妙子さん。東日本大震災で母親と愛犬を津波により亡くされ、その体験をうささんが絵本に記しました
東日本大震災で「大変な数の人命が失われたなか、『ペットを亡くして悲しい』とはなかなか言い出せない」という被災者の声を聞いたうささん。

その悲しみを少しでも癒すために思いついたのが、亡くなった犬や動物たちの絵を描いて、被災された飼い主さんにプレゼントするプロジェクトでした。

うささんは、仕事を通じて知り合った画家、イラストレーターの方々に呼びかけて、飼い主さんから受け取った犬や動物たちの写真などをもとに丁寧に絵を制作することにしました。なかには愛犬の写真もすべて津波に流されてしまったという方も。そうした飼い主さんからは愛犬の特徴などをよく聞いて、何度も修正を重ねて仕上げたそうです。

そしてでき上がった絵は、「震災で消えた小さな命展」として、被災地ほか全国で巡回展示をすることに。うささんとプロの画家によって描かれた愛犬ほか動物たちの表情はどれも生き生きとして、生前の姿をそのままとどめたものでした。
うささんの著作。東日本大震災で母と愛犬を亡くした方の話がつづられた『ぼくは海になった』(くもん出版)
うささんの著作。東日本大震災で母と愛犬を亡くした方の話がつづられた『ぼくは海になった』(くもん出版)
巡回展終了後、それぞれの飼い主さんに絵を贈呈した際には、皆さん涙を流して絵を抱きしめて「また私のもとに戻ってきてくれた」と言われたそうです。
「最終的に、被災された飼い主さんからの絵のご依頼は300件近くもきて、ボランティアで絵を描いてくださる画家の方たちも口コミで約100名が集まりました。このプロジェクトで皆さんの悲しみをやわらげる一助ができればと思いました。

また、避難できずに命を失った動物たちが数多くいたことを巡回展を通じて多くの人に知ってもらいたかった」とうささん。このとき描かれた動物たちの絵とそのエピソードは、うささんの著書『災害で消えた小さな命』で紹介されています。
『災害で消えた小さな命』(毎日新聞出版)
『災害で消えた小さな命』(毎日新聞出版)

災害時は愛犬と「同室避難」できることが重要

熊本地震でも避難所に入れない犬が外でつながれていることがあり、なんとか避難場所を探すことに
熊本地震でも避難所に入れない犬が外でつながれていることがあり、なんとか避難場所を探すことに
そしてもうひとつ、この東日本大震災の現場で、うささんが強く感じたことが「ペットとの同室避難」の必要性です。自治体などのガイドラインにはおもに「ペットとの同行・同伴避難」と書かれていますが、うささんは「この表現だと、避難所に愛犬といっしょに行く、という意味合いだけになるため不十分なんです。災害が起こったら、人
と愛犬がいっしょに避難所の室内に入れることが大切」と力説します。
 
東日本大震災では、愛犬を避難所の室内に入れることができず、屋外につないでおいたことから、津波によって亡くされた方が。また、動物たちと避難所に行けないため自宅にとどまり、命を落とされた方も。うささんはこれを教訓に、「ペット同室避難」のガイドラインを作り、各自治体へ働きがけをする活動もしています。
自治体が提供した仮設テントで犬とともに避難生活をする人も
自治体が提供した仮設テントで犬とともに避難生活をする人も
その後2016年に起こった熊本地震では、うささんはすぐに現地に入り、東北での経験を生かし、飼い主さんと愛犬が屋内に避難できる場所を自治体とともにつくる活動をしました。
「このとき、現地で被災した動物たちを救う活動をしていた個人ボランティアさんたちと知り合い、今後はチームとして活動しよう、となって誕生したのが『チームうーにゃん』です」
災害時に使う車を最大限活用するため、酸素室を備えた「動物用救急車」のサービスも開始。緊急処置が必要になった犬を動物病院に運びます
災害時に使う車を最大限活用するため、酸素室を備えた「動物用救急車」のサービスも開始。緊急処置が必要になった犬を動物病院に運びます
次回は「チームうーにゃん」の保護活動とシェルターを巣立った犬たちについてレポートします。
※保護犬の情報は2022年8月2日現在のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年10月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/チームうーにゃん
取材・文/袴 もな
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