ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、都心に保護犬のシェルターを設立し、問題行動のある犬、疾患がある犬も大切にケアし、譲渡につなげるティアハイムコクアの取り組みについて紹介します。
シェルターの運営には地域の方々からの理解も必要
東京・原宿のティアハイム コクア(以下コクア)のシェルターがあるのは、昔ながらの商店も並ぶ通りで、地域の結束も強い場所です。そのため、地域の方々から理解を得ることも大切だと代表の山田直美さんは話します。
「朝は、まずコクアのある通り全体の清掃を行っています。また地域に住む方々からのペットの相談にも親身に対応しています。地域にも役立つ存在として、私たちの真剣な活動の様子を見てもらうことで、今では地元の方々からの支援の輪も広がり、多くのサポートをいただけるようになりました」
また、2020年から始まった新型コロナウイルスの蔓延は、保護犬事情にも大きく影響していると山田さん。それはステイホームの時間が長くなったことで犬を家族に迎える人が増えたものの、結局「手に負えなくなったから」「通常どおり通勤することになったので世話ができなくなった」などの理由で手放す人があとを絶たないということ。
「1日に10件『引き取ってほしい』という問い合わせがきたこともありました。飼い主さんに飼育放棄やネグレクトされた犬たちは心に深い傷を負い、また人を信用してくれるまでに長い月日が必要になるんです。犬を保護して譲渡するだけでなく、飼い主さん側が終生飼育をするよう意識を変えていくこと、動物愛護の啓蒙の必要性をあらためて痛感しました。そのためコクアでは、犬の虐待やネグレクトを防止するためのパトロール、動物愛護を掲げたパレード、チャリティイベントにも力を入れています」
次回はシェルターを巣立っていった犬たちについてレポートします。
出典/「いぬのきもち」2023年4月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/ティアハイム コクア
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2023年2月7日現在のものです。