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「犬の保護活動を開始して以来、1500頭の犬たちの命を救い譲渡を行ってきた」音楽家、看護師など多彩な顔をもつ保護活動家 保護活動への思いを聞いた

ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。

今回は、2009年に犬の保護活動を開始して以来、1500頭の犬たちの命を救い譲渡を行ってきた小野早希惠さんの活動について紹介します。
撮影/田尻光久
撮影/田尻光久
小野早希惠さん
一般社団法人Loveセラピープロジェクト代表。保護活動家としての活動のほか音楽家としても活躍。音楽療法士、看護師の資格も有し、コミュニティFMのパーソナリティという顔も。

保護活動家として14年間で1500頭の保護犬の譲渡を行う

音楽家、看護師、ラジオのパーソナリティなど多彩な顔をもつ小野早希惠さんは、2009年に動物保護活動を始めて以来、現在までに約1500頭の犬の保護・譲渡を行い、愛護活動の啓発にも努めています。
 
小野さんは、保護犬を収容するシェルターはもたず、関東ほか他県の愛護センターや保護活動家や団体と連携して、おもに東京で譲渡先を探すスタイルをとっています。譲渡先を探すうえでは、多くのフォロワーをもつ小野さんのSNSやブログを駆使し、多数の保護犬たちを幸せな家庭へとつないできました。
 
また、保護と譲渡だけにとどまらず、不幸な境遇の犬たちを一頭でも減らし、人と犬が幸せに共生するための啓発活動にも力を入れています。
撮影/田尻光久
撮影/田尻光久

異なる分野のことを結集させ保護活動に役立てる

「私について『いったい何を本業にしている人なの?』とよく聞かれるのですが、簡単にいえば、これまで私が培ってきた医療、福祉、音楽、動物保護の知識や経験を結集させて、社会貢献につなげることを目指しています。そのために、2016年には一般社団法人『Loveセラピープロジェクト』を設立しました」と小野さん。たとえば、最近では、自作の音楽を使って朗読ミュージカル「命の授業」をプロデュース。関東各地で公演を行い、多くの人に命の大切さについて伝えました。また、人の看護師として病院や老人福祉施設に勤務した経歴を生かし、医療施設や老人ホームなどに保護犬によるアニマルセラピーの提案なども行っています。
2023年8月、命の尊さを伝える小野さん自作の朗読ミュージカル「命の授業」を公演。元劇団四季の五大輝一さん、元宝塚歌劇団・元劇団四季の渓なつきさんが主演
2023年8月、命の尊さを伝える小野さん自作の朗読ミュージカル「命の授業」を公演。元劇団四季の五大輝一さん、元宝塚歌劇団・元劇団四季の渓なつきさんが主演
さらに小野さんは、看護師の資格を取得するとともに、音楽家になることも目指し、海外にピアノ留学をした経歴も。この音楽も、気持ちが不安定になっている保護犬たちの気持ちを安定させること、また、犬が音に反応する性質を生かしたリハビリなどにも効果を発揮。
音楽家の小野さんは音楽で保護犬の不安をやわらげる音楽療法も行います。母犬と離された子犬も落ち着いたそう
音楽家の小野さんは音楽で保護犬の不安をやわらげる音楽療法も行います。母犬と離された子犬も落ち着いたそう
そもそも、多方面で活躍する小野さんがなぜ動物保護活動に邁進するようになったかを伺ってみると……、「大学の看護学科を卒業して、病院などに勤務をしたあとの2009年ごろ、関東の動物愛護センター近くにある有料老人ホームで看護師をしていました。そのとき入居者の方から『この近くの保健所ではたくさんの犬たちが殺処分されている』という話を聞いたんです。動物が大好きな私は、その話がとても気になり、当時の愛護センターに通い、リサーチを始めました」とのこと。小野さんは、数多くの犬たちがセンターに収容され、次々と殺処分されていく現状を知り『この現状を変えていくにはどうしたらいいのか……』と強く思ったそうです。
 
まずは関東の動物愛護センターに通い、職員の方々と信頼関係を結び、小野さんは保護活動家として保護犬を引き取れるよう登録。そして、収容されている犬たちの預かり先と新しい飼い主さんを必死に探していきました。
「東日本大震災の直後は関東の愛護センターには中型ミックス犬が多数収容されパンク状態になったんです。私は無謀にも『中型ミックス犬はすべて引き取ります!』と言って一度に20頭を引き受けたことも」
 
シェルターをもたない小野さんは、人脈を生かして、おもにSNSなどで保護犬の一時預かり先を探し、そして新しい飼い主さんを順次探していきました。最初は、試行錯誤で始めた譲渡活動でしたが、数をこなすうちに、小野さんなりのやり方を確立していったそうです。
「まず、いちばん大切なのは自分の中の『思い込み』を捨てること。私の場合、病気をもっている保護犬、ムダ吠えがひどい保護犬は『譲渡は無理』などと決めつけないようにします。以前に皮膚病で吠えも激しい犬の一時預かりをしましたが、その犬はずっと外でつながれて飼育されていたため、ストレスから外の音に反応していただけでした。また、疾患のある犬でもケアをすれば回復に向かっていきます。ある里親さんは『ケアをすればするほど、愛おしさが増していくものですね』と言ってくれたことも」と話す小野さん。
現在は他県の保護活動家とも提携して、現地の保護犬たちを東京に空輸して新しい家族を探す活動をしています。搬送ボランティアの協力も仰ぎます
現在は他県の保護活動家とも提携して、現地の保護犬たちを東京に空輸して新しい家族を探す活動をしています。搬送ボランティアの協力も仰ぎます
そのほか、譲渡希望者の審査をするときは、家族構成や年齢など書面上の条件だけで判断せず、直接何度も先方の話を聞いて、最終的にはその人柄で判断するようにしています。さらに、小野さんの譲渡の極意としては「犬だけを前面に出さないこと」。保護犬に興味がある人や愛犬家の人々だけにアピールするのではなく、フェイスブックやブログには幅広いトピックを上げるように。そしてそのトピックのなかに保護犬の話題も織り交ぜるようにしているとのこと。「犬関連ではなく、音楽や医療関連の仲間などが投稿を読んでシェアをしてくれることで、より募集範囲が広がるんですね」と小野さん。
今年10月にはシモゾノ学園国際動物専門学校で、保護犬についての授業をリモートで実施。保護犬の縁ちゃんも参加
今年10月にはシモゾノ学園国際動物専門学校で、保護犬についての授業をリモートで実施。保護犬の縁ちゃんも参加
次回は、小野さんと協力関係にある日本動物医療センターの活動をレポートします。
出典/「いぬのきもち」2024年2月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/小野早希惠さん
取材・文/袴 もな
※掲載の情報は「いぬのきもち」2024年2月号発売時のものです。
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