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犬がさらに愛おしくなる本「穴澤賢の犬のはなし」

最近出版された『平成犬バカ編集部』という本をご存知だろか。著者は、以前この連載でも紹介したことがあり、わが家にも愛犬マドとちょくちょく遊びに来てくれるノンフィクションライターの片野ゆかさんなのだが、とても興味深い内容だ。
はじめての日本犬専門雑誌「Shi-Ba」の誕生秘話と絡めて、平成になってからの犬事情の変化を追っている。思い起こせばひと昔前、犬といえば「番犬」であり、庭先または玄関にいるのが普通だった。私の家にも子どもの頃から犬がいたが、常に玄関の犬小屋が定位置で、部屋にあげることを親が許してくれなかった。
だから親の留守を狙って犬を部屋にあげて後でバレて叱られたり、悔しいので玄関にダンボールを敷いて一緒に寝ようとしたこともある。別にうちが特別厳しかったわけではなく、昭和の時代はそういう風潮だった。当時、私が知る限り室内で飼っているのはマルチーズくらいで、それでもかなり珍しかった気がする。同年代の人は、似たようなものではないだろうか。
そんな状況が変わったのは、平成になった頃からだという。マンションで犬と暮らす人が現れはじめ、昔はあり得なかった大型犬の室内飼いも増えてきた。いつの間にかどこかで逆転して、今では家族の一員として一緒に暮らすのが主流なっている。私もかつて1DKの狭いマンションで30キロもある富士丸と「同居」していたし、今でも大吉と福助は家で自由、寝るときは普通にベッドにあがってくる。
そんな中で創刊した「Shi-Ba」の編集長やスタッフが、まぁ「犬バカ」なこと。社内でリストラされてもおかしくない崖っぷちで編集長がこの企画を立ち上げた理由のひとつが「(愛犬の)福ちゃんを表紙にしたいから」というのも驚きだが、編集者やカメラマンまで愛犬を生活の中心に考える人達なのだ。
さらにこの本は、雑誌の裏話だけではない。犬をとりまく社会の変化から、間違った「軍隊的なしつけ」の話やペットビジネスの闇の部分、そして距離が近くなったことで明らかになった犬の驚くべきコミュニケーション能力の高さから、犬がウンチをした後にお尻を拭かなくてもいい理由まで、盛りだくさんになっている。
犬好きな人は、きっと「うちもそう!」と納得し、読み終わる頃にはそばにいる愛犬がより一層愛おしく感じる、そんな本だと思う。ちなみに、かつての私と富士丸のことも取り上げてくれているので、ぜひ読んでみてください。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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