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愛犬に「大丈夫!」は大丈夫じゃない|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.12
「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は、愛犬に「大丈夫よ」と言ってしまう場面はどんなときかを考えさせられるお話。飼い主さんが言う「大丈夫」が、大丈夫ではない(と犬が思っている)ことが多いんだそう! なぜそうなってしまうのかがわかります(編集部)
子どもたちは好奇心旺盛。多くはわれ先にと犬に近寄ってきますが、なかにはそれをためらう子どももいます。そんな子どもに先生が
「大丈夫よ」
と声をかける。
この言葉がけには、効果があります。
「大丈夫よ」の言葉に、安心するのでしょう。ためらっていた子どもが、勇気を出して手を伸ばしてくる。
さて、では犬に対して「大丈夫よ」という言葉がけはどうなのでしょう。犬を安心させる効果が、はたして期待できるのでしょうか?
言葉がけは状況判断の手がかりにすぎない
「パブロフの犬」として有名な、古典的条件づけです。
「イイコ」と言葉がけをして、フードを与えていると、やがて犬は「イイコ」と言葉がけをするだけで喜ぶようになります。しかし、「いけない」と言葉がけをしてからフードをあげていれば、犬は「いけない」という言葉に反応して喜ぶようにもなるのです。
犬にとっての言葉がけは、その言葉の響きを耳にしたときには、何が起きるのか、何が起きているか、といった状況判断の手がかりに過ぎない。そういうことなのです。
大丈夫の言葉がけは、どんなときになされているか
小学生ともなれば、正確とはいえずとしてもおおよその、この「大丈夫」の意味を理解しています。だから、「大丈夫よ」の言葉に安心するわけです。
でも犬は違います。
「大丈夫よ」の言葉がけが犬にいつなされているのか、それをよく考えてみてください。
すべてと言っていいほど、飼い主が「大丈夫よ」と言葉がけしているは、犬にとって「大丈夫ではない状況」のときです。
すなわち、犬は「大丈夫よ」の響きを耳にすると、「大丈夫ではない状況」が起きる、または起きている、そう理解していると考えられるのです。
わからない言葉に関しては我々だって……
「Come here !」は、英語のわからない当時の日本人たちの耳には、「カメや」と聞こえたそうです。
犬に向かって、そこかしこで「カメや」、「カメや」と言葉がけしている。
西洋人たちの犬の名前は、なぜかみんな「カメ」。当時の日本人たちは、そう勘違いしたそうです。
どんな状況でその言葉を耳にしたか。それによって、その言葉の本来の意味とは異なる、勝手な意味づけをしていく。
わからない言語に対しては、人間だって似たようなものなのです。
犬は人間のように、人間の言語を理解できるわけではありません。言葉で何かを教えようとか、何かを伝えようとか、くれぐれも考えないことです。
例えば苦手な何かに慣らしたいのであれば、フードが食べられる状況から、少しずつ慣らす。その状況が、いいことが起きる状況と結びつくような体験を、少しずつ積み重ねる。
くれぐれも「大丈夫よ」などといった、言葉には頼らないことです。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
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