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「口輪」に慣れれば犬のストレスが減る!? |連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.37

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は「口輪」のお話。口輪をしている犬を見ると、「凶暴な犬!?」と思ってしまいませんか? 昔はそのようなケースもありましたが、今は別な理由で使うケースが多いのです。口輪のイメージが大きく変わりますよ(編集部)

4カ月齢までの社会化期に慣らしておくべき「こと」「もの」のひとつに、「口輪」があります。
そうクラスでお話しすると、多くの飼い主は拒絶反応を示します。
抱きあげると「放せ」とばかりにカプカプ噛んでくる、噛みつき傾向の強い子犬の飼い主さんさえも「かわいそう」、と口輪に慣らすことを消極的にとらえます。
でもですね、口輪に慣らすことにデメリットはありません。
逆にメリットはある。
え? メリットって何?……ですか。
それはですね……

口輪が命を救うことも

犬は例えば歯石を取るのでさえ、全身麻酔になります。
すなわち、ケガや病気などでのちょっとした処置も、場合によっては全身麻酔が必要となるということです。
ところが、この全身麻酔がかけられないケースがある。
例えば災害時。予備電源も含めて電気が使えなくなれば、全身麻酔はできません。実際、東日本大震災でそういったことが起きました。
例えば高齢犬。全身麻酔は肝機能が衰えてくるとかけられなくなります。
噛まれる危険を回避できれば、処置できる。
口輪をつけさせてくたから、命を救えた! そうしたことがあり得るということなのです。
近頃はこんなかわいい口輪(アヒルの口のタイプ)もある

口輪に慣らしていてよかった!

実は、私自身それを実感したひとりです。
忘れもしない昨年の6月22日です。
パートナードッグの一頭「鉄三郎」が、食べたものをすべて吐いてしまう症状を呈しました。病院に連れて行って、吐き気止めなどを処方してもらい、ひと晩様子を見ることとなったのですが、よくならないので入院させ検査へ。
結果「巨大食道症」なる病気とわかりました。1週間ほど入院しましたがよくならず、胃ろうという措置(食べたものが胃まで届かず吐き出してしまうので、胃にチューブを挿入し流動食を入れる)をすることに。脇腹からチューブが繋がれて退院に至ったのですが、チューブを噛まないようにエリザベスカラーを常につけるよう指示をされました。
チューブを噛むことを防げるエリザベスカラーですが、落ちているものを口にすることは防げません。動きもかなり制限され、24時間装着はストレスもかなりあること考えられます。
そこで、室内や庭を自由にさせるときは口輪、散歩などリードをつけていて拾い食いが防げるときは口輪もエリザベスカラーもなし、としました。
口輪は犬の本能であるニオイ嗅ぎができ、かなりのストレス軽減になったようです。
つくづく口輪に慣らしておいてよかったと思えたできごとでした。
胃ろうの処置で吐き気も収まり、口からモノが食べられない以外、普通の犬と変わらず元気になった、退院後の鉄三郎

かわいそうだと思う気持ちが犬をかわいそうな結果に

口輪はかわいそう、そう思うのは自然なことかもしれませんが、丁寧に教えれば慣らすことができ、それが結果的に犬にとってストレスの軽減や万が一のリスクに備えられる。それがしつけというものです。
お箸に慣れていない人間の子どもにとって、お箸での食事はストレスとなります。
どのくらいストレスを感じるかは、利き腕でないほうで一度、食事をしてみるとわかります。
でも、親御さんたちは丁寧にそれを教える。なぜか? お箸に慣れ上手に使えることが、その子の将来にとって必要だからです。
現時点ではストレスを感じる(嫌がる)かもしれないけど、必要であればそれを丁寧に慣らしストレスを感じないように(嫌がらないように)教えていく。
それがしつけというものではないでしょうか?
そういえば、「犬のしつけ」それ自体をかわいそうと口にする人にも、まれにではありますが出くわします。
社会化もできておらず(世の中怖いものだらけ)、好ましい行動が何かもわからず日々生活させられる犬(要はしつけができていない犬)。私はそうした犬のほうが「かわいそう」に思えてなりません。
さて、みなさんはどうお感じになりますか?
巨大食道症の原因は、鉄三郎の持病「甲状腺機能低下症」だったようで、甲状腺ホルモンの薬を増やすことで症状が消失。現在は、胃ろうも口輪もエリザベスカラーも必要ない、元の鉄三郎に戻っている
文/西川文二
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!柴犬ぐらし』(西東社)など。愛犬はダップくん(15才)、鉄三郎くん(11才)ともにオス/ミックス。
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