犬が好き
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「前の犬はイイコだったのに……」と言う人が多い理由|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.72
犬を飼っていたことがある人が新しい犬を飼うと、前の犬との違いが気になるものです。そんなときによくあるのが、「前の犬はできたのに、今度の犬はできない」と比較してしまうこと。その相談をよく受ける西川先生が、「犬のせいにしないで」と警鐘を鳴らします(編集部)
いたずらばかりしていた私は、よく兄と比べられたものです。
通った小学校、中学校が同じだったもので、兄を知る教師から「兄貴はちゃんとしているのに、お前は……」ってよく言われました。
それぞれ同じ母親、父親から2分の1ずつ同じ遺伝子を引き継いでいるわけですが、それでも性格や行動は違う。
何の話を始めたかというと、前の犬はすぐ覚えた、おとなしかった、噛まなかった、「なのに、今度の犬はxx……」といった相談をよく受けるものでして。
そのときにいつも例に挙げる話のひとつなのです、この話。
実の兄弟でも違うのに、まして赤の他人なら
「兄弟姉妹はいますか?」と。
いると答えたら、「性格は同じですか?」と続けます。
すると、いると答えた方のすべてと言っていいほどが、「違います」って答えます。
そこそこ共通の遺伝子を持っている実の兄弟姉妹だって、そんなものです。
まして赤の他人なら同じなわけがありません。
以前飼っていた犬と今度の犬の母犬、父犬が異なれば、それは人間なら赤の他人。同じじゃないことをおかしいと考えることが、おかしい。
多頭飼いの飼い主は、先住犬のことを「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」などと口にしますが、母親も違えば父親も違う(稀にそうとは言えないこともありますが)。同じわけがないのです。
前の犬はすぐに覚えたのに、今度の犬は覚えない
私はそうしたことを口にする飼い主には次のように答えます。
前の犬はたまたまそうだっただけ。ラッキーだったのですよと。
犬を選ばずに、好ましい行動を教えていける方法論が、現在においては確立しています。
それは当コラムで何回もお話ししている、叱ることを排除した学習心理学や行動分析学で確立されている理論を応用する方法です。
その方法論を飼い主が理解すれば家庭犬レベルの話であれば、犬は好ましい行動を必ず覚える。
重要なのは、前飼っていた犬と比較せずに、適切な方法論を飼い主が理解しその方法論に基づいて教えることなのです。
犬種のせいにもしない
チワワだから、ミニピンだから、イタグレだから、ハスキーだから、頭が悪い、しつけができない、覚えないなど。
犬のプロと呼ばれている人たちにも、そうした人たちが存在します。
確かに犬種には、その犬種特有の行動傾向がある。
しかし、家庭犬に必要な好ましい行動を教えるということに関しては、覚えるスピードおよびその理解度に多少の差はあれど、適切な方法論を飼い主が理解できれば必ず教えていけるのです。
教えられないのは、その方法論を知らない、理解できていない、だけです。
まずは「生まれつき」的な何かのせいにしない。それが何より重要なのです。
そういえば子どもの頃、兄貴との口喧嘩で「〇〇っていう人が〇〇なんだよ」って、よく言い合いました。まったくもってその通り。
犬のことを「〇〇っていう人が〇〇」。
まぁそういうことなのです。
※著者補足:〇〇には適当な言葉をお入れください。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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