犬と暮らす
UP DATE
ほかの犬をかわいがると愛犬が怒るのは、嫉妬?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.73
今回は、犬の「嫉妬」に関するお話。飼い主さんが他の犬をかまうと愛犬が怒ったり、多頭飼いでどちらかの犬をかわいがるともう一頭が怒ったり……。これは本当に、人と同じ「嫉妬」の気持ちからくる行動なのでしょうか? 西川先生が、ホントのところを解説します(編集部)
数組の犬と飼い主が集います。
「かわいいですね」とある飼い主が、自分の犬以外に視線を向け、なでようとする。
すると、なでようとしている犬と飼い主の間に、犬が吠え割って入ろうとする。
「嫉妬しているわ」
その場にいた誰かが、そう口にしたりする。
確かに嫉妬のように見える行動ですが、私は嫉妬ではありませんよ、と口を挟みます。
さて、それはどうしてか。
嫉妬の意味は
他の犬をなでている飼い主に向かって吠え割って入る犬を嫉妬しているとするのは、もちろん➁の意味でしょう。
しかし➁の嫉妬の意味を満たすには2つの条件が必要です。
ひとつは「自分の愛する者の愛情が他に向いている」ことが理解できること、そしてもうひとつは「うらむ、憎む」ことができること。
さて、犬はその2つの条件を満たすことができるのでしょうか。
目に見えない何かを想像し比較して動く感情
「嫌悪、満足、恐れ、怒り、喜び」など、基本的な感情は犬にもある。ただ、人間の子どもが3歳前後から獲得する「恥ずかしい、罪悪感、プライド、軽蔑」といった、感情は獲得できないとも。
「恥ずかしい、罪悪感、プライド、軽蔑」は、いずれも目に見えない何かを想像し比較して動く感情です。
すなわち、犬は目に見えない(実際には五感で感じられない)何かを想像し比較して動く感情は獲得できていない、そう言えるのです。
「自分の愛する者の愛情が他に向いている」……愛情そのものは目に見えません。
その目に見えないものが自分ではなく、他に向けられていると理解することは、それこそ目に見えない何かを想像し比較できる能力が必要となります。
であれば、犬は嫉妬の意味を満たす、ひとつの条件を満たすことができない。
もうひとつの条件、うらむ、憎む、はどうでしょう。
少なくとも、うらむ、憎むは、人間の子どもが1歳未満で獲得できる心理ではありません。
であれば、犬も獲得できているとは言い難い。
以上から、犬は嫉妬を意味する条件を満たせない、となるわけです。
リソースへの優先権の主張と考える
自身が手に入れたい限られた商品にいち早くアクセスするために、他者の間に割り込んでいく。
自分にとって大切な物や事をリソース(資源)と言いますが、商品はリソースで、バーゲンセールなどでの商品の奪い合いは、その限られたリソースに対する優先権を主張し合っているようなものです。通常これを嫉妬とは考えない。
飼い主になでられる、飼い主の視線、あるいは飼い主そのものは、犬にとっては目に見える大切な「リソース」といえます。
それが他の犬に向けられる、それに対してそのリソースへの優先権を主張している。
他犬をなでようとすると吠え、間に割って入ろうとしたりする、とはまさにそういうことと考えられる訳です。
確かに「嫉妬」とは言えないかもしれない、でも「やきもち」とは言えるのでは?
そうお考えになる方もいるかもしれませんね。
それはまぁ、どうかぜひご自身で調べてみてください。おそらく、嫉妬と同じ結論となるはずかと……。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
UP DATE