シニア期になると、いつもと違う様子をみても「もう年だから」なんて片づけてしまいがちですが、その少しの変化が認知症の始まりかもしれません。症状が進行する前に気づいてあげられるよう、愛犬をよく観察し、認知症についてよく知っておきましょう。獣医師の佐々木彩子先生(「キュティア老犬クリニック」院長)にお話を伺いました。
犬の認知症について知ろう
犬の認知症とは
「老化による脳の萎縮」や「脳血管障害」が引き金となり、脳神経細胞や自律神経がうまく機能しなくなることで、認知症を発症します。
発症すると、物を正しく認識することや記憶すること、判断する能力が衰えてしまうため、今までできていたことができなくなったり、徘徊したりなど特徴的な症状があらわれることも。
発症する年齢
犬によって差はありますが、ハイシニアになる10才~12才頃までは、心身ともに元気な犬が多く、認知症を発症するのはまれといわれています。しかし、14才くらいになると認知症を発症する数が増え始め、16才を超える頃には、かなりの犬に認知症と疑われる症状がみられるようです。
治すことはできるのか
残念ながら完治させる治療法はまだありません。
しかし、サプリや漢方を活用したり、脳に対して程よい刺激を与えられるような接し方をしたり、室内環境を整えたりすることで、認知症の症状を緩和させたり、進行を遅らせたりすることができます。
認知症になりやすい犬種はいる?
最近は犬の寿命が延びたため、どんな犬種でもリスクがあるといえます。しかし、平均寿命が13才前後の大型犬に対して、小型犬の平均寿命は15才を超えることもあるため、長生きする分、小型犬の方が発症する割合が高いといえそうです。
ほかにも、長い間、魚を中心とした食生活を送ってきた日本犬は、ほかの犬種に比べるとDHAやEPAを必要する量が多く、認知症を引き起こしやすいという説も。
また、怒りっぽくストレスを受けやすい神経質な犬や、あまり散歩には行かず、家で過ごすことが多い犬は脳への刺激が少なく、認知症になりやすいといわれています。
発症のきっかけや、ほかの病気や老化との違い
発症のきっかけ
認知症を発症する原因の一つとして、ストレスが関係あるといわれています。引っ越しなどの環境の変化や、同居犬の死などはシニア犬にとってストレスに。
また、白内障など視覚を失う病気になり、外出が減ってしまうと脳への刺激が減ってしまうため、認知症を招いてしまうケースもあるようです。
ほかの病気や老化との違い
脳梗塞や脳炎、脳腫瘍などの病気によっては、認知症の症状と似ている、てんかん発作やけいれん、徘徊や性格の変化などの症状が出ることがあります。
12才以下の若い犬にこのような症状がみられた場合は、脳の病気の可能性が疑われます。MRIやCTによる診断の結果をもとに外科処置を行うことで、症状が改善することもあるようです。
認知症は早期発見が大切です。少しでも「おかしいな」と感じたら、「年を取っているから…」で片づけず、動物病院を受診するようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2021年9月号『若いうちから知っておいてほしい 愛犬の認知症に気づくための11のヒント』(監修:「キュティア老犬クリニック」院長 佐々木彩子先生)
文/hare
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