涙やけを起こして目の周りが変色してしまうと、せっかくのかわいい愛犬の顔がちょっと残念ですよね。今回は、犬の涙やけの原因や治療・予防法、なりやすい犬種、フードの見直し方や、実際に涙やけを改善した飼い主さんの体験談をご紹介します。
犬の涙やけとは?なぜ起こるの?
犬の涙やけは「流涙症(りゅうるいしょう)」や「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」、逆さまつ毛、目と鼻をつなぐ鼻涙管の閉塞などが原因で、目から涙があふれてしまうことによって起こります。
これらのなかでも特に多いのが流涙症で、本来涙腺から涙管を通り鼻へと排出される涙が、何らかの原因によって大量にあふれ出してしまう病気です。
涙が出ること自体はごく自然な現象ですが、それが過剰分泌になると目頭の毛に付着し、バクテリアを繁殖させてしまいます。また、涙のなかのタンパク質やミネラル成分が酸化して変色を起こすことで、涙やけが発生します。
犬の涙やけの症状とは?
目頭の下が赤茶色に変色するのが、涙やけの最大の特徴です。またその部分に炎症が起こることで、皮膚炎をわずらうケースやかゆみを伴うケースもあります。
犬の涙やけが起こる主な原因6つ
犬の涙やけを引き起こす具体的な原因は、大きくわけて6つ考えられます。くわしく見ていきましょう。
原因1)目にゴミや毛が入ってしまった
被毛やまつ毛が目に入ってしまうことで涙が止まらなくなり、涙やけを引き起こすパターンがあります。これは長毛種の犬や、逆さまつ毛の犬に多く見られる現象で、異物を取り除いてあげることで症状が緩和しやすくなるでしょう。一方で、急激に涙の量が増えた場合は、目に傷がついているおそれも。目の状態を確認し、迅速に獣医師の診察を受けることも大切です。
原因2)鼻涙管のトラブル
子犬時代から継続して涙が多く出る犬の場合は、先天性の「鼻涙管(びるいかん)」トラブルが考えられます。鼻涙管は、目と鼻をつなぐ管のこと。この器官が詰まることで涙が鼻から抜けず外にあふれ出し、涙やけを起こしてしまうのです。
原因3)瞼(まぶた)の構造
犬によっては、目頭のところに毛が密集していることや瞼が内巻き(内反)になっていることが。その結果、涙が毛をつたって眼外に流れてしまい、涙やけを起こしてしまいます。
原因4)体質的な問題
春先など、ある一定の季節にのみ涙が大量に出てしまったり、目元だけでなく全身の毛が変色したり、発疹などが見られたりするときは、アレルギーがあるおそれがあります。花粉症や食物アレルギーが疑われる際は、早めに動物病院を受診しましょう。
原因5)マイボーム腺機能の異常
瞼の縁には、マイボーム腺と呼ばれる油分を分泌する部分があります。この油が眼の表面を被い、水分の蒸発や過剰に流れてしまうことを防ぐ役割をもちますが、何かの理由によりその機能が落ちると、涙が瞼をこえて眼の外に溢れてしまうのです。
原因6)ドックフードやおやつが体に合っていない?
普段愛犬に食べさせているフードやおやつが原因で、涙やけが発生するという説も。フード自体の品質が悪かったり、保存状態が悪く酸化したフードを食べたり、原料や添加物に対してアレルギー反応が出たりすることが考えられます。
添加物や体質にそぐわないたんぱく質は、鼻涙管などに悪影響を及ぼすおそれもあるため、獣医師に相談しましょう。
涙やけしやすい犬種は?
目が大きい犬や鼻が短い短頭種と呼ばれる犬は、涙やけを起こしやすいといわれています。プードルやチワワ、ポメラニアンやシー・ズー、パピヨン、マルチーズ、パグ、ブルドッグなどの犬種は、涙やけに注意してあげましょう。
犬の涙やけの治療法とは?
ゴミや毛、逆さまつ毛などの異物によって涙やけの症状が出ている場合は、それらをしっかりと取り除くことが何よりも重要です。愛犬の体に異常が起こっていないかを確かめるためにも、涙やけが気になったら一度は動物病院を受診するとよいでしょう。
病院での治療は、花粉などによるアレルギーが疑われる場合、点眼薬や内服薬を処方されることが多いです。逆さまつ毛や目頭の毛が目に入りやすくなっているときは、抜くことで症状が改善することも。状況によっては、定期的に処置が必要になるケースや、麻酔をかけて処置をするケースもあります。
目の病気によって涙やけが発生しているときは
さまざまな目の疾患によって涙やけの症状がみられる場合は、各病気の原因に合わせた治療を行っていきます。なかでも多いのは抗生剤や消炎剤、角膜保護剤の処方です。また鼻涙管のトラブルによって症状が出ている場合は、麻酔を伴う処置(鼻涙管洗浄)を行うこともあります。
涙やけを取り除く方法
比較的症状が軽く、自宅で涙やけを取り除く場合は、赤ちゃん用の洗浄綿やヒト用のアイコットンなど清潔な不織布を使うのがおすすめです。涙やけが見られない状態でも、毛が長時間湿っているとそこから細菌などが繁殖しやすくなりますので、こまめにふき取ってあげてください。
このとき目に指やコットンが入ってしまうと角膜を傷つけるおそれがあるので、十分注意しましょう。また涙やけを取り除くのは、あくまでも「一時的な対処法」でしかないことを、忘れないようにしてください。
涙やけにはホウ酸が効果的?作り方や注意点は
ホウ酸は目薬の成分にも使われており、刺激が少なく殺菌作用があるため、涙やけの対策として有効であるといわれています。
そのため、ホウ酸水を家庭で作り、犬の目の周りをぬぐうときにひたして使うのもおすすめ。
ホウ酸水の材料は以下になります。
作り方は、精製水を60℃に温め、煮沸消毒をした保存用のボトルに入れたら、そこにホウ酸を入れて溶かして冷ますだけ。
冷蔵庫で保管し、2週間で使い切るようにしましょう。
なお、犬の目の周りに傷がある場合は、使用を避けてください。
犬の涙やけの予防法
涙やけによって変色してしまった被毛は、カットするしかありません。そうならないためにも、日ごろからしっかりと予防をするのが大切。ここでは3つの予防法を紹介します。
予防法1)ストレスを減らす環境づくりの徹底
運動量が不足すると新陳代謝が悪くなり、体内に老廃物がたまって涙やけを引き起こしやすくなります。散歩などの適度な運動によって愛犬のストレスを緩和し、涙やけを発症しにくい体質をつくってあげることが大切です。
予防法2)生活環境の改善
花粉やハウスダストによって起こる涙やけを予防するためには、定期的な掃除や空気の循環が効果的です。
予防法3)食事を見直す
おやつやフードに含まれるたんぱく質の量や種類をコントロールすることで、涙やけを引き起こしにくくなるケースもあります。ほかのフードに変えることで症状が改善されることもあるため、涙やけが気になるときは愛犬の健康状態をチェックしながら、食事を見直してみるのも一つの手です。
実際に涙やけを治した飼い主さんの体験談
※2021年6月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 400人)
犬の涙やけに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
ここからは、いぬのきもちWEB MAGAZINEで行ったアンケート結果をもとに、実際に涙やけを治した飼い主さんたちの声をみていきましょう。
まず、「愛犬が涙やけを起こしてしまったことはありますか?」という質問に対しての回答がこちら。
なんと、回答してくれた飼い主さんの7割以上に、愛犬が涙やけを起こした経験があるそうです。
その中で涙やけを改善した飼い主さんは、およそ3割
※2021年6月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 400人)
犬の涙やけに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
愛犬が涙やけになってしまった飼い主さんのうち、改善した経験があるのはおよそ3割。涙やけの改善は、なかなかうまくいかないという一面もあるようですね。
涙やけの改善には、フードの見直しや衛生面も大事
※2021年6月実施「いぬのきもちアプリ」内アンケート調査(回答者数 400人)
犬の涙やけに関するアンケート(いぬのきもちWEB MAGAZINE)
実際に涙やけを改善した飼い主さんは、どのような方法をとっていたのか、アンケートをとった結果がこちらです。
「フードの見直し」「生活環境を清潔に保つ」「動物病院での治療」などを取り入れた結果、改善したという声が多数を占めました。また、フードの見直しと動物病院での治療など、複数項目を実践して改善させた飼い主さんも多いようです。
飼い主さんたちが実践した内容は?
最後に、それぞれの回答によせられた、飼い主さんたちの声をみていきましょう。
- 「フードを変えたことで、拭いたときの茶色の涙が透明になり、嫌なニオイも無くなり、少し改善されました」(フードを見直した)
- 「毎朝顔をふいてあげています。最近は気持ちいいのか、自分から顔をむけてきます」(犬の生活環境を清潔に保つようにした)
- 「マルチーズですが、涙やけがひどく、目の下どころか周りまで赤くて、おサルさんと呼ばれるほどでした。しかし点眼薬と服薬で、今では真っ白な毛並みになりました」(動物病院での治療)
- 「アレルギー体質のようで、全てのアレルゲンを除去したフードにして、ひと食材ごとに体調の変化を確認しながらフードの見直しをしたら治りました」(動物病院での治療、フードを見直した)
- 「トリマーさんや獣医師さんから、日常のケアなどのアドバイス頂きました。フードも消化をよく考え、アレルギーの少ない鹿肉をメインにしたものに変えたら、すごく変わりました」(フードを見直した、動物病院での治療、その他)
涙やけの症状がひどいときは迷わず動物病院へ
症状の違いや原因、犬の体質によって涙やけの対策や治療法は異なります。ただの涙やけだと思っていたら実は大きな疾患が隠れていたということがないよう、症状が気になるときは早めに動物病院を受診するようにしてください。病気の早期発見・早期治療が、大切な愛犬の体や目元のかわいさを救うのです。
愛犬の涙やけに関しては、下記の記事も参考にしてみてくださいね。
参考/「いぬのきもち」2015年11月号『犬の病気別 知っておけば、愛犬の健康・長寿の役に立つ なりやすい年齢別ランキング』
監修/清水悌二先生(相模原プリモ動物医療センター第2病院勤務)
文/kagio
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。