涙を流す症状があらわれる犬の目の病気はいくつかあります。今回は、犬がかかりやすい涙や目やにが増える病気の原因・症状・治療法・かかりやすい犬種について解説します。目の病気は年齢問わずかかることがあるので注意しましょう。
犬が涙を流すのは悲しいからではない!
犬にも「感情」があるとされていますが、犬が人のように悲しくて涙を流すのは考えにくいです。犬が涙を流しているときは、さまざまな原因が考えられますが、まずは目の病気を疑ってみましょう。
とくに、涙を流すだけではなく、目をこする・気にするなどの様子が見られたり、目やにの量が急に増えてきたと感じたりしたら、目の病気にかかっている可能性が高いです。
では、犬がかかりやすい目の病気には、一体どんなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
涙の症状が見られる犬の目の病気①「涙染色症候群(涙やけ)」
涙染色症候群の原因・症状
「涙染色症候群(なみだせんしょくしょうこうぐん)」とは、本来であれば鼻涙管を通り鼻へと排出される涙が、刺激や鼻涙管の閉塞・まぶたの構造や機能の異常によってまぶたをこえてあふれ出してしまう目の状態です。長期間流涙が続くと「涙やけ」と呼ばれる、目の下の毛の変色を引き起こします。
涙やけは目頭周辺の毛に涙が付着し、涙の中のタンパク質やミネラル成分が酸化するなどして発生し、バクテリアを繁殖させたり、皮膚炎を起こしたりしてかゆみを伴います。
もともと涙が出やすい体質で涙やけができてしまう犬もいますが、まぶたが内側に向かってぐいっと曲がりこむ「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」や、逆さまつげ、アレルギーなどによっても涙やけになることがあるので注意しましょう。
涙染色症候群の治療法
原因となる疾患がある場合はそちらの治療を行います。まぶたの構造異常がある場合は、手術が必要になるケースも。また、鼻涙管の洗浄や手術をするケースもありますが、対応している動物病院は限られるので、獣医師に相談してみましょう。
そのほか、アレルギーが関与する場合には、フードを替えることで改善することもあります。
涙やけのケア方法
涙やけができている場合は、病気の治療と並行しながら、抗生剤や消炎剤、保護剤などが処方されることがあります。また、涙やけによって変色してしまった被毛はカットしたり、こまめに涙や汚れを拭き取ってあげたりするのもいい方法でしょう。
涙染色症候群にかかりやすい犬種
シー・ズー/マルチーズ/チワワ/トイ・プードル/ヨークシャー・テリア など
涙の症状が見られる犬の目の病気②「角膜炎」
角膜炎の原因・症状
角膜とは目の表面の透明な膜の部分で、そこに外傷性の刺激が加わることで発症するのが「角膜炎」です。また、感染症など非外傷性のものもありますが、この場合は両目に発症することが多いようです。
角膜炎になると、白目が充血する、涙や目やにが増える、しきりに目を気にするなどの症状が現れます。ほかの目の病気を併発するおそれもあるので、早めに動物病院を受診しましょう。
角膜炎の治療法
角膜炎と診断されたら、炎症の原因を取り除き、点眼薬で症状を抑えます。状態によっては、飲み薬を併用する場合もあります。自宅では、目をこすらないように、エリザベスカラーを装着させることも。
角膜炎にかかりやすい犬種
チワワ/シー・ズー/マルチーズ/アメリカン・コッカー・スパニエル/フレンチ・ブルドッグ/ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア など
涙の症状が見られる犬の目の病気③「結膜炎」
結膜炎の原因・症状
結膜炎とは、まぶたの裏と眼球の表面を覆っている無色透明の粘膜(結膜)に炎症を起こし、赤く充血してしまう病気です。原因として考えられているのは、アレルギーや細菌、ウイルス感染によるものから、ほこりやシャンプーによるものまでさまざまです。
結膜炎になるとかゆみや痛みを感じるため、まばたきが増え、目が開きにくくなり、細めるようなしぐさを見せることがあります。放置すると炎症が広がることがあるので、なるべく早く適切な治療を開始することが大切です。
結膜炎の治療法
結膜炎になった原因を探り、それに合った方法で対処します。例えば、目に毛が当たって炎症を起こしている場合は毛を抜いて処置し、ケガや感染症による炎症の場合はその治療を行いながら炎症を抑える点眼薬を投与します。また、結膜炎は再発しやすいので、状態維持のために点眼薬や飲み薬を処方されるケースも。
結膜炎にかかりやすい犬種
パグ/フレンチ・ブルドッグ/ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア/アメリカン・コッカー・スパニエル/シー・ズー/チワワ/マルチーズ など
こんな犬の目の病気にも注意して!
涙や目やにに関する犬の目の病気は、ほかにもあります。
眼瞼外反症(がんけんがいはんしょう)
下まぶたに発症することが多く、セント・バーナードなど、顔面の皮膚がたるんでいる犬種に多く見られる病気です。先天性のほか、病気やケガによる顔面麻痺なども原因のひとつ。この病気になると、まぶたが外側に向かってめくれてしまうため、結膜の粘膜の一部が露出し、涙の量が増えたり目やにが出たりします。また、角膜炎や結膜炎も同時に発症しているケースも少なくありません。点眼薬などで早めに治療を行いましょう。
逆さまつげ
逆さまつげは、本来外側に向かって生えるはずのまつげが、内側に向かって生えることで角膜を刺激し、涙や目やにが多くなってしまう病気です。症状が軽い場合には、まつげを定期的に抜くことで状態がよくなることもありますが、場合によっては「毛根切除」の手術を行うケースも。「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」を併発していることもあり、その際には手術が必要になります。
ものもらい(マイボーム腺炎)
「ものもらい」は、アレルギー体質の犬や、免疫力が弱まっている犬に多い病気だといわれています。まつげのつけ根付近にあるマイボーム腺が炎症を起こすことで、まぶたの縁が赤く腫れあがり、イボのような“できもの”ができてしまうのが特徴です。おもな治療法としては、抗生物質の点眼や軟膏、ピンセットなどで膿をつまんで取り除くなどが挙げられます。
目の病気は、年齢にかかわらず発症するもの。涙や目やにが多くなってきたと感じた際には、早めに動物病院を受診するようにしてください。大好きな愛犬に辛い思いをさせないためにも、病気の早期発見・早期治療を心がけましょう!
参考/「いぬのきもち」2015年11月号『犬の病気別 知っておけば、愛犬の健康・長寿の役に立つ なりやすい年齢ランキング 保存版!』(監修:ノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生)
監修/清水悌二先生(相模原プリモ動物医療センター第2病院勤務)
文/hasebe
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