犬がクンクンとニオイをかぐ行動を“クン活”と呼ばれています。クン活は犬の本能的な行動で、子犬でもシニア犬でも見られますが、とくに猟犬がルーツの犬種だとその頻度や程度が高まる傾向に。
今回は、そんな犬の“クン活”にまつわる雑学・豆知識を、愛玩動物看護師の福山貴昭先生に聞きました。
犬がニオイをかぎたがる理由
人は周囲の情報を目で見て認識することが多いですが、犬は“ニオイの世界の住人”で、嗅覚を頼りに確認します。
例えば、壁に穴が開いていて、壁の反対側から音がした場合、人は穴に目を当てて向こうの様子を確認しますが、犬は穴に鼻を当ててニオイをかぐでしょう。人の「見たい欲求」は、そのまま犬の「かぎたい欲求」といえます。
犬がニオイから得る情報の種類はさまざま
ほかの犬の体から発せられるニオイや排せつ物のニオイからは、その犬の性別や発情の有無、年齢などがわかるといわれています。また、飼い主さんのニオイからは、飼い主さんの体調のほか、怒っている、緊張しているなどの感情さえも、かぎ分けることができるのだとか。
なお、犬は食べ物やほかの動物、植物のニオイも敏感にかぎ分けていると考えられています。
犬がニオイから情報を判断する仕組み
犬がニオイから情報を判断する仕組みは以下のとおりです。
(1)ニオイの粒を鼻の受容体でキャッチ
犬の鼻腔の中には、ニオイの分子をキャッチする受容体があります。その数は2億以上とされ、なんと人の40倍以上。また、受容体の種類も人が約400種類といわれているのに対し、犬は約1000種類あるとされ、それによりさまざまなニオイのパターンの識別が可能に。
(2)ニオイの信号が嗅覚を担当する脳の組織へ送られる
ニオイの受容体が分子をキャッチすると電気信号が発生し、神経を通じて嗅球(きゅうきゅう)と呼ばれる脳の一組織に送られます。嗅球はニオイの情報を整理し、脳の各部位に信号を送る組織。犬の嗅球は、人の30倍もの大きさがあるといわれています。
(3)脳の各部位でニオイ情報を処理・分析
嗅球から脳の各部位に信号が送られて情報が分析されることで、犬はニオイの種類や強さ、ニオイに関する感情や記憶を認識します。ちなみに、アメリカの大学の研究によると、犬の脳内には人にはない複雑なニオイ情報のネットワークがあり、視覚と嗅覚が複雑に連結していることがわかったそうです。
クン活という犬の行動には、深い意味があることがわかりました。
お話を伺った先生/福山貴昭先生(ヤマザキ動物看護大学准教授 博士(学術) ドッググルーミングスペシャリスト SF SPCAヒアリングドッグトレーナー)
参考/「いぬのきもち」2025年6月号『「ニオイかぎ」で本能を満たしてもっとイキイキ! 愛犬よろこぶクン活ガイド』
文/長谷部サチ
※犬の嗅覚に関する体の構造については諸説あります。この特集では福山先生の見解をもとに、編集室で構成し紹介しています。
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。