犬と暮らす
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犬が人の口まわりをなめるのはなぜ? 注意点・やめさせる方法は
そこで今回は、犬が「人の口まわり」をなめる理由や注意点について、いぬのきもち獣医師相談室の先生にお話を聞きました。
犬が人の口まわりをなめる理由とは?
獣医師:
「本来、犬が相手の口まわりをなめるのは、子犬が同じ群れの成犬に対して、積極的に食べ物をねだったり甘えたりする際のしぐさに近いものです。その点からは、犬が飼い主さんに対して口まわりをなめるときは、子犬のようにお世話を求めていたり、甘えたい気持ちになっていたりすると考えられます。
また、犬の『人の口まわりをなめる』という行動に対して、飼い主さんが特に強く遮らず、むしろ繰り返し受け入れる対応を取り続けると、犬は本能的な甘えの気持ちだけでなく、『人の口まわりをなめると受け入れてもらえる』と学習して、その行動をよりしやすくなることもあるでしょう」
犬が人の口をなめることで感染しうる「人獣共通感染症」とは?
獣医師:
「犬は日常的に自分の体のさまざまな部位や、環境中の気になったものなどをなめて確認する習性をもっています。そのため、犬に口をなめさせる行為は、人獣共通感染症に限らず、環境中にあるさまざまな病原を、人の口の中に取り込んでしまう可能性がある状況といえるでしょう。
なお、日常生活の中で気を付けたい主な人獣共通感染症としては、
- 咬傷やひっかき傷などから感染のおそれがある『パスツレラ症』や『カプノサイトファーガ症』
- 感染犬の便を介して感染するおそれがある『回虫症』や『エキノコッカス症』などの寄生虫感染症
- 感染犬の尿から感染するおそれがある『レプトスピラ症』
- 感染部位の皮膚への接触や、環境中に残った病原(真菌)によって感染するおそれがある『皮膚糸状菌症』 などが挙げられます。
特に『パスツレラ症』については、その原因菌が約7割の犬の口腔内常在菌として無症状のまま保持されていると考えられているので注意が必要です。飼い主さんが犬に傷をなめられたり、また、直接噛まれたりひっかかれたりしてできた傷が、後に腫れて痛みが出るなどの症状がみられた場合は、速やかに病院に受診をして治療を受けましょう。
犬に口をなめさせるということは、こういった病気を発症する可能性がある病原を、ご自身の口の中に取り込むリスクを負う行為でもあると理解していただければと思います」
そのほか、犬が人の口まわりをなめるリスクとは?
人の口は、粘膜と表皮のちょうど境目の性質をもつ唇と、それに続く口腔内の粘膜からなる器官です。もともと粘膜は通常の皮膚(表皮)に比べて上皮が薄い構造をしているため、さまざまな刺激に対する抵抗性や、感染する可能性のある病原に対するバリア機能が、表皮に比べて劣ります。
このように、人の口は繊細な部位であることから、刺激や病原にあえて積極的に接触させるようなことは避けたほうがよいのです」
犬が人の口まわりをなめるときの対処法とは
例えば、ご自身の口の前を手で遮って、犬にはその手の表面をなめさせるのがおすすめです。犬が手をなめ始めたら、その手を少しずつ口元から遠ざけ、口元をなめられないように、犬の顔とご自身の顔の間にある程度の距離を取りましょう。
なお、犬がなめたその手で、そのまま目や鼻などの粘膜をこするのは避けるようにしてください。犬の気持ちが落ち着いたら一度その場を離れ、しっかりと手を洗いましょう」
参考/「いぬのきもち」2021年1月号『モノ・人・自分をなめるワケが知りたーい! 犬はどんな理由でペロペロするの?』(監修:獣医師 獣医行動診療科認定医 荒田明香先生)
取材・文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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