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子犬期の必需品・かじりグセ防止スプレーが「あんまり効かない」といわれる誤解を解く! |連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.103
今回は、子犬のあま噛みや家具等のかじりグセで困っている際によく使われる、苦味スプレーにまつわるお話。西川先生は生徒さんから「あんまり効かない」と相談を受けるそうですが、よくよく聞いてみると、使い方に共通した間違いが! その間違いとは何でしょうか?(編集部)
さらには、首輪とリード(これらは、飼い始めの日から慣らした方がいいので)。
他には、あま噛み対策として、コング、アキレスまたは牛皮のガム、引っ張りっこ用のおもちゃ、そして苦味スプレー(あま噛み対策用品がなぜ必要かは、コラムVol.86をご覧ください)。
以上が、犬と生活を始めるために最低限必要なもの。
さて、この苦味スプレー、噛んでほしくないものにあらかじめ塗る。噛めば嫌なことが起きるのでその場所を噛まなくなる、という商品なのですが「あんまり効かない」と訴える飼い主が少なくない。
「あんまり効かない」とはどういうことか?
「あんまり効かない」のはなぜなのか?
飼い主に尋ねると……
「噛んでいるから塗る。しばらくは噛まないけどまた噛むのでまた塗る。その繰り返しで、いつまでたってもそこを噛まないようにはならない」と。
嫌なことが起きる行動は減っていく。
この動物の行動原則のひとつの作用を苦味スプレーは期待するわけですが、そもそもこの「嫌なことが起きる行動は減っていく」は、以下の3つの条件がすべて揃わないと効果はまったく期待できないことがわかっている(当コラムを毎回お読みの方はお分かりかと思いますが、今回が初めてという方もおられると思うので一応解説)。
その3つの条件とは、その嫌なことに
①適切な強さがある、その適切な強さの嫌なことがやめさせたい行動に対して
②即座に起きる
③必ず起きる
です。
犬によっては①の条件を満たさないことがあります。夏みかんの皮なんかを平気で口にする犬などはまさにそれ。苦味スプレーを、喜んでなめたりする。
そうした犬は、いわずもがな苦手な味を他に探すしかない。

アルコール成分の揮発が嫌な場合は……
苦味スプレーとして最もポピュラーな「ビターアップル」の成分表示を見ると、りんご抽出苦味成分の他、イソプロバノールというアルコール成分が入っているのがわかります。
そうした犬は苦味が苦手なのではなく、このアルコールの揮発成分が、嫌なのです(嗅覚が刺激される)。
ただアルコール成分は、数分もしないうちに揮発します。
揮発してしまえば、嗅覚が刺激されることはありません。
苦味が平気であれば、あとは噛み放題となる。そういうことなのです。
苦味が苦手でも、一度塗布したスプレーの苦味がいつまでも続くわけではありません。
10分しか効かない犬から、6時間効く犬まで、その効き具合はさまざまなのです。
先の条件を満たすには、すなわち①適切な強さがある、②即座に起きる、③必ず起きる、を満たすには「効かなくなる前に塗り足す」、そうするしかないのです。

クレートで休ませる時間とリビングに出す時間のメリハリをつける
「噛んでいるから塗る。しばらくは噛まないけどまた噛むのでまた塗る」では、3つの条件をすべて満たしていないからです。
24時間、効かなくなる前に塗布を繰り返するのは物理的に不可能です。
だからこそ、特に苦味スプレーが必要な時期(飼い始めから第二次性徴期を迎えしばらくするまで)は、例えばクレートで2時間休ませ、1時間クレートから出したらまた2時間クレートで休ませる、といったインターバルを繰り返す飼育方法がいいのです。
10分しか効かない犬でもそれならば、クレートから犬を出す前に塗布しそのあとは9分ごとに5回たっぷり塗り足せばいい。
これなら物理的にも可能となるわけです。
先ほど、別の嫌がる味を探すしかないと言いましたが、その辺りの話も少し。
市販されているものとしては、カプサイシンを主成分にした商品、他には合成の苦味成分を使用している商品もあります。
市販されているものが、一切効かない犬もいます。
そうした犬の場合は、とにかく嫌がる味を探すしかない。
生姜汁が効いた犬もいます。センブリ茶が効いた犬もいます。
最後になりますが、注意をひとつ。
ビターアップルを試しにでもご自身でなめたりしないことです。水のある場所、口をすすげる場所に駆け込む結果と相成りなりますからね。

写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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