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「犬を育てるのって、人の子育てと同じですね」と飼い主さんは言うけれど……、ホントに同じ?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.149
西川先生によると、子犬を飼ってしつけトレーニングを学び始めた飼い主さんが「人間の子育てと同じですね」と言うことが多いのだとか。それは本当に同じなのでしょうか? 西川先生が解説します(編集部)。
これ、ときどき飼い主が口にします。
犬の行動の理解、好ましい行動の習慣化、好ましくない行動の改善の方法などは、学習心理学や行動分析学に基づく理解、方法論は、まさにその通りです。
「人間の子育てと同じですね」
これもよく聞く感想。
幼い頃は手もかかる。付き合ってあげる時間も十分に必要。
十分に手をかけ、時間をかけてあげると、第二次性徴期を乗り越える頃には手がかからなくなる。
犬を育てるのも、人の子育てもある意味同じ。
でも、イコールではないのですね、これが。
実際は、同じところもあるが、違うところもあるのです。
今回は、そのあたりのお話を。
どこが同じでどこが違うか
トイレは適切な方法で教えれば、飼い始めから1カ月で完璧に教えられます。
適切な方法はVol.54にアップ済みですが、まずはクレートとトイレサークルを用意する。クレートを寝床とし、オシッコが我慢できなくなる前にクレートから出し、トイレサークルに入れる。オシッコをそこでできたら、即座にフードを与えほめる。
2カ月のパピーがオシッコを我慢できるのは、平均日中3時間程度、夜は4時間程度。ということは、間違いなく教えたいのであれば夜は1回、飼い主は起きる必要がある。
何が同じかというと、世話をするために夜中に起きるところ。
人間の赤ちゃんの場合は、おむつを取り替えミルクを与えるために、親は夜中2回は起きる。
何が違うかというと、夜中起きる回数。犬は1回で済む。
犬は適切な方法で教えれば、1カ月もすれば排泄したくなったら自らトイレに行くようになる。でも、人間の子どもはそこまでいくのに何年もかかる。
重要なのは第二次性徴期からしばらく後まで
幼い頃から始め第二次性徴期を迎え、中学を卒業する前後までに終える。
犬の場合も同様です。
トイレのしつけは飼い始めの2カ月齢(人間の2〜3歳に当たります)から始まります。そして適切な方法を用いればコンパニオン・ドッグとしてのしつけは、第二次性徴期を迎えそこからしばらくする頃、遅くとも1才頃(人間なら15〜17歳)までには一段落します。
違いは何か。
実際に要する期間です。
人間の場合は、12〜13年ほど(2〜3歳でスタートして中学卒業頃までとした場合)かかりますが、犬の場合は6〜10カ月程度で終わるということです。
夜中に起きるのも同様ですが、その大変な期間が犬の場合はほんの短い時期で済むのです。
(この短い時期適切なしつけを行えば、後の10数年は困ることなく過ごせるわけです)
動物の行動原則も同じだが
これは人間も犬も同じ。
違いはそれを徹底できるかどうか。人間は難しい、というよりも物理的にできないのです。
犬の場合は、室内飼いであれば1日のそのほとんどを、管理下に置くことができます。
好ましくない行動は体験させないようにして、好ましい行動に対してごほうびを与えることは、可能ということなのです。
しかし、人間の子どもの場合は不可能です。不可能というよりもそれをするわけにいかない。子どもの自立を妨げることになるからです。
人間の子どもの場合、幼稚園、保育園、小学校、中学校、高校、と進むに従って、親の目の行き届かない世界を体験していく。それが自立へのプロセスです。
人間の場合は、好ましくない行動は体験させないようにして、好ましい行動に対して親がごほうびを与えることは、成長するに従って物理的にできなくなっていくのです。
犬は人間の子育てと同じように大変だが、その大変な期間は人間の何分の1以下と短く、飼い主の接し方でイメージ通りの犬に育てられる、ということ。
そう、犬は飼い主次第、ということなのです。
西川文二氏 プロフィール
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