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しつけ相談に来る家庭の共通点「犬のおもちゃの出しっぱなし」、それがよくない理由|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.151
西川先生の経験によると、おもちゃを出しっぱなしにしている家庭は、犬の問題行動が起こりやすいのだそう。おもちゃの出しっぱなしがなぜ? その理由を解説します(編集部)。
お悩みの内容はそれぞれなのですが、多くの飼い主に共通していることがありました。
それは何かというと、「おもちゃを出しっぱなしにしている」ということ。
おもちゃを出しっぱなしにしていることの、何が問題なのか?
考えてみましょう。
おもちゃを出しっぱなしにしているということは、犬が自分の遊びたいとときに勝手に自分だけで楽しめることを意味します。
なかには、飼い主に遊んでほしいときに、おもちゃをくわえて持ってきて、飼い主の前に落とす犬もいます。
いずれも遊びのスタートを(その多くはおしまいも)、犬が決めていることになります。
後者は、犬の「遊びに付き合え」という指示に「かしこまりました」と飼い主が従っている図式も、見てとれます。
問題はここ、です。
おもちゃを出しっぱなしにしない理由
その3つとは飼い主は、食べ物を分け与えてくれる存在、楽しい存在、優しい存在、ということを伝えることでした(詳しくはVol.94をご参照ください)。
実は、伝えるべき重要なことは、もうひとつあるのです。
それは「決定権は飼い主にある」ということを伝える、ことです。
これを怠ると、さまざまなことを決めているのは飼い主ではなく、自分(犬)。結果、飼い主の言うことはまったく聞かない、そんな犬に育ててしまうことにもなるのです。
おもちゃを出しっぱなしにすることは、おもちゃ遊びの決定権が犬にあることを伝えることになる。
おもちゃぐらいはいいじゃないですか、とお思いになるかもしれませんが、おもちゃを出しっぱなしにしている飼い主は、ほかのことでも犬に決定権を与えていることが多い。
だからこそ、おもちゃを出しっぱなしにしているという共通点が、問題行動で悩んでいるお宅の多くに、見てとれるのです。
え? そんなことも?……
「膝の上に飛び乗る→抱いてあげる」=「抱け/なでろ!→かしこまりました」という図式が、ここには見てとれます。
抱くこと(抱かれること)の決定権を犬に与えると、どうなるか。飼い主の都合で犬を抱こうとすると、逃げたり噛んだりしてくるといった、好ましくない問題が出てくるのです。
抱いてあげたいのであれば、飛び乗って来ても一旦は下ろす、そしてオスワリを指示しオスワリしたごほうびとして抱いてあげる。
それだけで抱くこと(抱かれること)の決定権は、飼い主にあることを伝えられる。
お腹を見せてなでることを要求する犬もいます。要求に応えてなでていると、急に噛んでくる。そうした犬もいます。
「おいなでろ!→かしこまりました」と要求に応えていると、「いつまでなでているんだ!もういい!→かしこまりました」。こうした図式すら、ここには見て取れるわけです。
お腹をなでてあげたいのなら、一旦オスワリからのフセを指示し、そのごほうびとしてなでてあげる。そして、犬が噛んでくる前に、なでることをやめることです。
こちらはそうすることで、「決定権は飼い主にある」、そのことを犬に伝えることができるのです。
決定権は飼い主にある。それを伝えることが、犬の幸せへとつながる
「抱いて飛びつく→抱いてあげる」、「出してと吠える→出してあげる」、「あそこに行きたいと引っ張る→引っ張る犬についていく」……などなど、犬の要求に「かしこまりました」と無条件で応えていないか、一度さまざまなことを見直すことです。
犬の要求を叶えてあげたいのであれば、無条件にその要求に応えるのではなく、好ましい行動を自発的に取るまで待つか、指示するか、いずれも好ましい行動に対するごほうびとして、その要求に応えてあげること。
そうすることで、決定権は飼い主にあることを、犬に伝えることができるのです。
決定権を持つ存在は、注目される存在ともいえます。
注目される存在は、視線をよく向けられる存在でもある。
犬が飼い主に自発的な視線をよく向ける。そうした関係にある飼い主と犬の両者に幸せホルモンと称されるオキシトシンが増える。
そうなのです。
いきつくところ、飼い主と犬、その両者の幸せのために、「決定権は飼い主にあることを伝える」ということなのです。
西川文二氏 プロフィール
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