1. トップ
  2. 犬が好き
  3. 連載
  4. 穴澤賢の犬のはなし
  5. 感情ダダ漏れ犬【穴澤賢の犬のはなし】

犬が好き

UP DATE

感情ダダ漏れ犬【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

私は友人からたまに「お前は嫌なとき、露骨に顔に出るよね」と言われることがある。これでも大人として、なるべく感情は顔に出さないようにしているつもりだが、バレているらしい。その要因は、大吉と福助にあるのではないかと思う。

常に感情ダダ漏れな大福

なぜなら、彼らは常に感情が表情や態度にダダ漏れだからである。この前書いたように犬は優れた『観察力』を持っているので、こちらが仕事なのかオフなのか、1週間のサイクルをだいたい把握している。だから平日に仕事している分には問題ない。
しかし、休日にどこへも行かないと不服らしい。たまたま週末に用事が重なって、2週間以上何も楽しいことがないと、露骨につまらなそうにする。「つまんねーオーラ」と呼んでいるが、脱力した顔と態度でアピールしてくる。見事に協力して。
2頭揃ってこれをやられると、まぁまぁの圧力で「なんか申し訳ない」という気持ちになってくる。実は週末出かけた用事も仕事だったりするのだが、そこは配慮してくれない。生活サイクル的にそろそろ遊びに連れて行けよ、ということなのだろう。
だからそんな重圧に急かされるように仕事を前倒しで片付けたりして、山の家に行く努力をする。すると彼らは「やったー!」という顔になる。そして、到着するやいなやドッグランを駆け回ったり、バトルしたりする。そのときの表情や動きは、「つまんねーオーラ」のときとはまるっきり違い躍動感がみなぎっている。
さんざん走り回って遊んで疲れた夜の寝顔は、満足感に満ちている。なんて分かりやすいやつらなんだろう、と思う。これくらいストレートに感情を出しつつ生きられたらどんなに楽だろうとさえ思う。

愛犬の感情に動かされる飼い主

私の場合、そんな感情ダダ漏れ(たまに入る演技も含め)の彼らによって、行動している面も多い。彼らが不満そうだからと、出かける予定をねじ込んだり、ちょっとでも楽しめるようにどうすればいいかと考えたりする。つまり彼らは感情をストレートに出すことによって、周囲の人を動かしているのだ。やっている方の私も、彼らが喜んでくれればそれでいいし、むしろ夜ふかしもせずちょくちょく休んで生活サイクルが健康的になるし、むしろありがたいと思っている。
だから知らず知らずのうちに影響されて、すぐ顔に出るようになってしまったのだろう。でも「お前は嫌なとき、露骨に顔に出るよね」という友人の言葉は、良い意味ではなく、褒め言葉でも何でもない。むしろ真逆だ。感情がダダ漏れなのは犬だから成立するのだ。今更だが、気をつけよう。犬はいいなぁ。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
ツイッター
インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
楽天ブックス
「犬の笑顔が見たいから」(世界文化社)楽天ブックス
CATEGORY   犬が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る