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犬の吠えや飛びつき、楽しく減らす発想の転換法|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.158
今回は、吠える、飛びつくなどの困った行動がなかなか直らない場合に、発想の転換法をご紹介。西川先生は、困った行動をトリック(芸)に代える提案しています。一体どんな方法なのでしょうか?(編集部)
獣医学部の学生たち有志の依頼で、犬のしつけ教室を行っていたことがありました。
学生たちが飼い主代わりになって、学校で飼育している犬たちをトレーニングする。
しつけ教室は1クール7回。基本的なしつけのトレーニングを進めていくこと以外に、オテやスピンなどできそうなトリックを何かひとつ見つけ、教え方を自分で考え最終日までに形にする、そうした課題もカリキュラムに入れていました。
学校の犬たちはトレーニングらしいトレーニングをなされないまま、それまで成長してきた犬たち。じっとすることがない犬、逆に固まって動かない犬など、個性的な犬が少なくない。
自分の担当する犬によっては、何を教えることができるのか、と悩む学生もいました。
近づくと二足立ちをする犬
前足を前胸にくっつけるような形で、なんというか、怪獣ピグモンのような前足といったらいいか、ベストのポケットに手を入れる昔の映画に出てくる重役のような姿というか、とにかく愛くるしい。
私はそれをトリックにしてみたらどうかとアドバイスしました。
二足立ちをしているときに、合図(“タッチタッチ”の声がけと、手のひらを上に向けて煽るように動かすハンドシグナル)をかけ、フードをあげるのです。
一方で、二足立ちをしそうになったら背中を向け無視する。
合図は前触れとして(先行刺激として)教えることがセオリーですが、行動をとっているとき(同時)につけても、動物はその合図のときに何をすればいいかを理解していきます。
合図あり→行動(二足立ち)→いいことあり
合図なし→行動(二足立ち)→いいことなし
結果的にいいことが起きる行動の頻度は増え、結果的にいいことが起きない行動は減っていく。
やがて合図をかけたときに二足立ちをする(合図のないときは二足立ちをしない)というトリックが、仕上がっていきました。
飛びつきも合図でコントロールできる
他人のみならず飼い主にも飛びつく場合は、まずは飼い主への飛びつきをなくすことが重要です。
そうアドバイスすると、なかには自分への飛びつきが全くなくなるのは寂しい、と訴える飼い主がいます。そうした訴えには、飼い主への飛びつきは合図で行うようトレーニングするよう、加えてアドバイスします。
方法は前段に記した方法と同じです。
合図あり→行動(飼い主への飛びつき)→いいことあり
合図なし→行動(飼い主への飛びつき)→いいことなし
結果、合図を発しないと飛びつかなくなり、一方で飛びついてほしいときには合図をかけ飛びつかせることができる。飛びつかせたいときにのみ、飛びつかせることが可能になっていくのです。
問題行動をトリックに変えていくという対処法
「興奮の吠え」もそのひとつです。
興奮を煽って吠えさせ、フードをあげるのです。重要なのはそのときに「吠えろ」「スピーク」などの合図をつけることです。
そして、合図を発しないときに吠えたときは、視線を外し無視することです。するとやがて、犬は合図で吠えるようになり、合図のないときに吠える行動の頻度を減らしていきます。
並行して「吠えやむ」ことも教えていきます。
興奮させ吠えさせ、今度はひと差し指を立て自らの唇に当てる仕草をして、「シーッ」と合図を発し吠えやむのを待つのです(吠えている限りフードはあげない)。
いいことが起きない行動はやめていきますから、犬は吠えるのをやめます。
吠えやんだら、そこでフードを提供する。
するとやがて、合図で吠えやませることが可能となっていくのです。
さてさて、読者の皆様のなかにも、トリックに変えることで問題解決へと導ける、そんなお悩みの行動があるかもしれません。
あれ? ひょっとすると……と、何か頭に浮かぶのなら、ぜひとも今回のコラムを参考にいろいろ試してみてください。
西川文二氏 プロフィール
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