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今ひとつ納得できない話【穴澤賢の犬のはなし】

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今ひとつ納得できない話

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家族で犬や猫と暮らしていると、彼らの態度が人によって違うことに気づく瞬間がある。そして、その態度に納得できないことも……。

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大吉と福助は嫁のことが大好きで、嫁が帰宅して玄関からガチャと音がした瞬間、それまで2階のリビングで眠っていても飛び起きて、一気にテンションがあがり、部屋に入ってくるのを今か今かと待ち望む。

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そして嫁が「ただいま〜」とリビングの扉を開けると、2頭はしっぽをブンブンふりながら飛びついて熱烈大歓迎する。朝出ていって夜帰ってきただけじゃん、と思うのだが、何日も会っていなかったかのように喜び合う。大吉はもちろん、福助も毎日そんな調子だ。

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嫁に飛びつく福助を眺めていて、ふと思う。「おいおい、待てよお前」と。だれがお前のトラウマを克服させたと思っている。人間が怖くて、抱き上げられそうになると牙を向いていたお前と真剣に向き合って、人間は怖くないんだということを、噛まれても、ちょっとくらい血が出ても、諦めずに辛抱強くわからせようとしたのは、だれなのだ。嫁ではなく、私だろう。

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ちなみに嫁は、その当時、嫌がってギャンギャンわめく福助を見て「かわいそうじゃない! もう止めてあげてよ!」と怒っていたくらいで、私のトラウマ克服キャンペーンには否定的だった。だけど私は「今、ここで止めたらダメなんだよ」と怒られようが、福助に噛まれようが、毎日、ちょっとずつ体のどこを触っても嫌がらないよう、努力を続けたのだ。

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そして何カ月もかかって、少しずつ彼の心を開かせ、信頼関係を築いた。今ではもう何をどうしても平気だし、今の福助しか知らない人は、きっとただの警戒心のないタヌキだと思うほどに、変貌を遂げた。

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それなのに、帰宅したときの喜び方は、なぜ私より嫁のほうが激しいのだ。なぜ、夜眠るときは、私ではなく嫁にベッタリなのだ。福助のトラウマ克服について、嫁は一切なんの努力もしていないというのに。いや、別に男同士ベタベタしたいわけではない。努力に対する見返りを求めているわけでもない。ただ、納得がいかないだけだ。もしかしたら、こういうことを気にする器の小ささを見抜かれているのかもしれない。

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