犬が好き
UP DATE
患者さんの心を癒す“セラピードッグ”になった元保護犬たち
今回は、東京慈恵会医科大学附属病院が2019年より開始した、元保護犬による「慈恵犬セラピー」について、その活動内容と3頭の犬たちの活躍ぶりを紹介します。
元保護犬によって結成された「慈恵犬セラピー」は多くの患者さんの心の癒しに
現在、「慈恵犬」と呼ばれる3頭の犬たちは、慈恵医大の正式な職員として、毎週木曜日に附属病院の外来棟の出入り口で外来患者さんをお出迎えし、ふれあいセラピーでは多くの患者さんの心をなごませています。また小児科病棟に入院中の子どもたちには、タブレット端末を通してリモートセラピーを行っています。犬たちは、元は不遇な環境に置かれた保護犬でしたが、今は病院のスタッフたちが新しい飼い主となり、毎日丁寧なケアを受け、それぞれが活躍の場を与えられ生き生きと仕事をこなしています。
元保護犬をセラピー犬として育成するプロジェクトが始動
「そもそもの発端は、慈恵医大では犬を実験動物として使うことを動物愛護の観点から廃止したことに始まります。中止が決定されてからは、それまで使用してきた研究施設内の広い犬舎も不要になりました。そこで、この犬舎を有効活用して、セラピー犬を一から育成できれば、と思い立ったんです。セラピー犬が常に院内にいれば継続的に患者さんがドッグセラピーを受けられますし、将来的に入院患者さんの早期離床(術後などに早くベッドから起き上がれること)、早期退院の一助になればと考えたのです」と嘉糠先生。
「あきらめずに2年くらい、関東近郊の保護シェルターや愛護センターに片っぱしから連絡してみました。すると、福島県郡山市保健所が私たちの趣旨に賛同してくれて、保護犬を譲渡してくれることに。保護犬の譲渡条件のなかでも重要なのが『終生飼育』です。当大学の実験動物研究施設には職員が365日休みなく交代で勤務するので、常に犬たちの状態を見守り、世話をすることができます。そして、大学と附属病院の医師やスタッフ全員が犬たちの飼い主となり、大切に育てていくことを約束させていただきました」
こうして記念すべき第1号の慈恵犬となったのは、2017年に郡山市保健所から迎えられた生後4カ月の「そらまめちゃん」でした。最初はとても怖がりでしたが、嘉糠先生の自宅で数日間を過ごしたあとは、先生の研究室にデビュー。嘉糠先生は、大学内の各施設や研究室にそらまめちゃんを連れていき、誰に会っても物怖じしないよう人慣れの訓練をしたそうです。
そして、2019年までにそらまめちゃんに続いて、郡山市保健所からはブルドッグのボスくん(当時1才)、そしてナッツちゃん(当時生後4カ月)が迎えられました。
写真/田尻光久
写真提供/東京慈恵会医科大学
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2023年6月7日現在のものです。
UP DATE