ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、東京慈恵会医科大学附属病院が2019年より開始した、元保護犬による「慈恵犬セラピー」について、その活動内容と3頭の犬たちの活躍ぶりを紹介します。
リモートでの犬たちとのふれあいによって、小児科病棟に笑顔が増えました
今回は、毎週木曜日に開催される外来患者さんとのふれあいセラピーと、小児科病棟でのリモートセラピーの様子を取材させていただきました。
外来棟出入り口でのふれあいセラピーには、子どもから大人まで多くの患者さんが集まり、犬たちの頭をやさしくなでたり、リードを持って少し歩いてみたり、犬も人も楽しい時間を満喫しました。犬の横には必ずらんぷの会のメンバーがついて、犬たちの性格や特徴なども解説します。
「外来棟でのふれあいセラピーには、小児科病棟を退院した子どもの患者さんも来て、それまでリモートでしか会えなかった犬と初めてふれあうことができ、大喜びしてくれるんです」と井田尚子さん(〝慈恵犬〞のために結成されたボランティア団体「らんぷの会」代表)。
午後から始まる小児科病棟でのリモートセラピーでは、らんぷの会のメンバーが、各犬の個性に合わせたシナリオを制作。たとえば、「マテ」が得意なそらまめちゃんなら、おやつを置いてマテをさせている様子を、小児科病棟のタブレット端末にライブ配信します。タブレット端末を通して子どもの患者さんが「ヨシ!」と指示すると、そらまめちゃんはおやつを食べることに。リモートセラピーによって、泣いてぐずっていた子どもがどんどん笑顔になってきたり、また看病をする母親も、セラピーに参加したことで気持ちが癒されたなど、プラスの影響が数多く出ているそうです。
最後に「慈恵犬」によるドッグセラピーの構想を立ち上げ、その実現に向けて尽力した嘉糠洋隆先生は、「新型コロナの規制が緩和されたので、いよいよ一般病棟の入院患者さんとじかにふれあうセラピーの実施が視野に入ってきました。また、今後も郡山市保健所と提携してセラピー犬候補の犬を迎える予定です。〝慈恵犬〞が老犬になったときは、無理のない役割を見つけて、最後まで生き生きと活動してもらえれば」と、語ってくれました。
出典/「いぬのきもち」2023年8月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/東京慈恵会医科大学
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2023年6月7日現在のものです。