犬が好き
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脱走・流血……ほとんど野犬のような保護犬が家族の愛で心を開くまで
※保護犬、飼い主さんの情報は2017年7月6日現在の情報です
お話を伺った、石原千津子さん(左)と小川智恵美さん(右)。波流ちゃん(中央)は「公益財団法人岡山県動物愛護財団」で保護され、ふたりのもとへ
“財団”と“センター”がつないだ、波流ちゃんとの出会い
「これまで飼ってきた犬は拾ってきたコばかり。今度はラブラドール・レトリーバーをそだててみたいと、ブリーダーさんのところで探したのですが、子犬がいない時期ですぐの出会いはありませんでした。その後ネットで犬のことを検索していると、殺処分が迫っている『岡山県動物愛護センター』(以後センター)の犬の写真が出てきたんです。そのコが先住犬にそっくりで!一度会いに行こうとセンターに足を運んだことがきっかけでした」
石原さんたちは土曜日にセンターに出向きました。休日なので開いていたのは財団のほう。事情を説明すると、その犬はまだセンターにいて会うことができないとのこと。そこで財団の職員が紹介してくれたのが、波流ちゃん(当時はハナちゃん)だったのです。
そのときは決めかねて財団をあとにしたおふたりでしたが、自宅に帰ったあとも気になり、しばらくは定期的に財団のホームページを見て、波流ちゃんがまだいるかどうかチェックしていたそう。
それから1ヵ月間、毎週末財団に通っては、まだ犬舎に残っている波流ちゃんを見守り続けていました。そうしているうちにいつしか波流ちゃんへの愛着が膨らんでいった石原さんたち。ついに引き取ることを決めました。
壮絶な経験をしてきた波流ちゃんに、たくさん甘えさせてあげたい
ドッグランも兼ねて作られた石原さん宅の庭。波流ちゃんは、ブロック塀を軽々と飛び越えてしまったため上に柵を追加
そのころは慣れない生活のせいか、無茶をして脱走を繰り返していた波流ちゃん。
高さ1mほどある庭の塀を飛び越えて脱走したり、2階の網戸を突き破り、ベランダからジャンプして脱走したり。
「一度、流血騒ぎもありました。留守中にサッシを噛み、ガラスを割っていたことがあったんです。脱走は免れたものの、割れた衝撃で鼻をケガし、帰宅すると部屋中血だらけ。血の量には驚きましたが、傷は大したことなくて安心しました」と話す石原さんたち。
センターの職員の話によると、山奥で長い間放浪していたという波流ちゃん。その後センターで保護され、運よく財団の譲渡会にも参加。
しかし野犬に近い波流ちゃんは1年もの間、新しい家族との出会いはないままでした。
そんなとき現れたおふたりとの出会いは、まさに運命的なものだったのかもしれません。
「今までは子犬から飼っていたので、成犬でしかも保護犬を飼うことに少し構えていました。でも波流を迎えてみて、少しずつ心を開いてくれる姿が愛おしくて。子犬からでも成犬からでも愛情を注げばちゃんとわかってくれるんだと気づきました。波流はきっと壮絶な経験をしてきたんでしょうね。人に甘えたくても我慢して過ごしてきたと思うので、これからはたくさん甘えさせてあげたいです」
時代の波に流され命をつないできたコだから“波流”と命名した石原さんと小川さん。
「波流のおかげで笑いのネタが尽きません」と、笑顔があふれるおふたりでした。
装着時の脱走を防ぐためにダブルリードを使用。石原さんのお手製で丈夫に作られている
おやつ入りのおもちゃの使い方も覚えた波流ちゃん。ふたりのそばで落ち着いた様子でカメラ目線
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取材・撮影・文/尾﨑たまき
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