犬が好き
UP DATE
犬がおなかを見せるのは人への「服従」?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.4
「いぬのきもちWEB MAGAZINE」より新たにスタートした連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
さて、今回は。「おなかを見せるのは服従のポーズ」と聞いたことはありませんか? もし飼い主さんが叱った際に愛犬がおなかを見せたら、愛犬はそれ以降、困った行動をしなくなっているでしょうか……? また繰り返しているのでは? そのあたりの矛盾に迫ります。(編集部)
これ、ときどき耳にする飼い主からの訴え。文章的に大きな矛盾が見られます。言うことを
聞かないのは、服従していないということを示しているわけですから。
なぜこんな訴えを飼い主はするのか。それは、おなかを見せるのは「服従のポーズ」と、昔からいわれているからに過ぎません。でも、文章の矛盾からして、それは事実ではないといえます。
なぜ服従のポーズとされるのか?
犬の行動も、このドミナンス・セオリーに基づきよく語られていました。
しかし、アメリカの獣医行動学会は、問題行動の要因となり、問題を悪化させる可能性があるとし、犬と飼い主家族との関係にこのドミナンス・セオリーを当てはめることをすべきではないと、10年ほど前に声明を発しています。
おなかを見せるのは「服従のポーズ」。20年以上前に行動学上で、そう定義づけされたのは事実なのでしょう。しかし、今やその定義付けが正しいかどうかも、議論の余地があるのです。
ちなみに、獣医学生たちが手にする動物行動学の参考書では、かつて「優位性攻撃行動」とされていた行動が、「優位性攻撃行動」ではなく「葛藤性攻撃行動」などと記されています。
犬がおなかを見せるのはいつで、結果何が起きているか?
「飼い主の帰宅時、玄関でおなかを見せるので、いつもおなかをなでてあげている」……であれば、飼い主の帰宅時におなかを見せれば、おなかをなでてくれる。このことを過去の経験で学んでそれを習慣化しているのです。いずれも「相手の言うことを何でも聞く」こととは、なんら関係ありません。
うれしいとき、リラックスしているとき、あいさつのとき、遊びの途中、他犬が怒ったとき、などなど対犬におなかを見せるのも同様。「相手の言うことを何でも聞く」こととは全く無関係なのです。
行動の真の意味を理解するためには
おなかを見せるのは服従のポーズ。行動学でそう定義づけた、それはよしとしても物理学での「仕事」と我々がイメージする「仕事」が異なるように、行動学上の「服従」は、少なくとも我々がイメージする「服従」と同じではない。それが真実ということです。
「昔からそういわれているから」ではなく、習慣化されている犬の行動は、結果的にいいことが起きているか、嫌なことがなくなっているかの、そのどちらか。その視点で今一度犬の行動を見てください。犬の行動の正しい意味が理解できるはずです。
写真/Can ! Do ! Pet dog School提供
西川文二氏プロフィール
UP DATE