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時代により変わりゆく犬のしつけ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.7
今回のお話は、幸せな犬生を送るために必要なことについて。現代は犬を番犬ではなく「家族の一員」として飼う時代になったからこそ、教えるべきことも変わってきているそう。もしかしたら時代遅れのしつけをしているかも!? 今と昔の違いを例に、わかりやすく解説します。(編集部)
台所と縁側と廊下、あとは洋風の応接間などくらいでしたかね、板の間だったのは。家人が集いくつろぎ、寝る場所はみんな畳敷きでした。
そして、畳敷きが当たり前の時代は、きちんとした正座および正座でのちゃんとした挨拶(礼)を、「しつけ」としてどこの家庭でも教えていました。
さて現代においてはどうか?
畳の部屋のない家が少なくありません。親御さんが「きちんとした正座および正座でのちゃんとした挨拶」を知らないこともあります。
え? 「何を言いたいのか」って?
それはですね、しつけや教育というのは、時代や環境によって変わる、ってことを言いたいのですね。
番犬の時代のしつけをしていませんか?
吠えに困っているのは、しつけができていないからに他なりません。矛盾しています。
そこで、「しつけができているとは、具体的に何を教えて何ができるということですか?」と飼い主さん尋ねると、判で押したように「食器に入れたエサを目の前に、オスワリ、オアズケ、オテ、オカワリ、ヨシ」を教えていて、それはできるという同じ答えが返ってきます。
食器に入れたエサを目の前にしての、オスワリ、オアズケ、オテ、オカワリ、ヨシ。室内飼いの犬が珍しかった時代は、この5項目を教えていれば、よくしつけができていると言われたものです。でも、それはフローリングを板の間って言っていた時代、日本の犬の大多数が番犬の時代の、番犬にするためのしつけです。
行政に持ち込まれる犬に関する苦情で、常に上位に上がるのは「吠え」という、そんな時代です。
現在において、求められるのは番犬にしないための「しつけ」なのです。
何を教えるかは、3つの視点から考える
人間の場合、その子が一員となる社会のなかで、幸せな人生を送るために知っておくべきさまざまなことを教える、と言えるでしょう。
犬のしつけも同様です。
その犬が過ごす社会のなかで、幸せな人生、いや犬生を送るために知っておくべきことを教える。それがしつけです。
犬は、人間社会のなかで共生を求められる存在です。犬だけが幸せでは困ります。犬と飼い主だけが幸せというのも、いただけません。「犬も幸せ」、「飼い主も幸せ」、そして「周囲に迷惑をかけない」(=周囲を不幸せにしない)。この3つの視点が、何を教えるべきかを考えるときに、欠かせないということになるのです。
周囲に迷惑をかけず犬も家族も幸せに。自発的アイコンタクトがそれらを可能に
飼い主を自発的によく見ている犬は、周囲を警戒していません。当然、番犬的な吠えをすることもありません。他人に飛びつくこともなく、他の犬とのすれ違いもトラブルなく行えます。飼い主をよく見る犬は、「犬も幸せ」、「飼い主も幸せ」、「周囲にも迷惑をかけない」犬、と言えるのです。
現在の犬に何を教えるかに重要な3つの視点を満たしたいのであれば、飼い主を自発的によく見ている犬に育てる、ということになる。
では、飼い主を自発的によく見る犬に育てるにはどうしたらいいのか、何を教えていけばいいのか……おっと申し訳ない。文字数に限りのある関係で、このあたりのお話は次回へ持ち越しということで。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
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