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犬が人によって言うことを聞かないのはなぜ?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.18
今回のお話は、犬はなぜ、人によって言うことを聞いたり聞かなかったりするのかについて。例えば、ある人がオスワリと言うとするのに、別の人が言うとしないなど、そんな場面に出くわしたことはありませんか? その理由は、威厳があるとか、怖いとか、そういったことではなく、ちょっとした違いが犬に大きく影響しているようです(編集部)
しつけ教室に来られた飼い主さんが、ときどき冗談交じりに口にする言葉です。
(先生とは私のこと、恐れ多いことではありますがそう呼ばれています)
例えばフセ。
私がフセに導くと、犬はフセをする。
飼い主さんだと、フセない。
なんか自分が犬にバカにされているような、そんな気持ちにもなってしまうからなのでしょうか、飼い主さんから冒頭の言葉が出るのは。
でも犬は人間に対して、自分よりも上とか下とか、順位づけなどはしません。もちろん、飼い主をバカになどもしません。
はてさて、飼い主さんと私とは、犬にとって何が違うのでしょう?
犬にとってのわかりやすさが違う
工事で道が片側通行になっている。
手前で止まるか、止まらずに突き進むか。
運転する側は、誘導員の指示に従おうと思うわけですが、この誘導員の動きが、すごくわかりやすい人と、すごくわかりにくい人がいる。
犬にわかりやすい動きとは?
私は20年以上に渡りその犬にわかりやすい動きを研究し、身につけているわけです。
私がフセに導く動きは犬にからすると、すごくわかりやすい道路誘導員の動きと同じ。
一方、飼い主さんの動きは犬にとっては、工事現場のすごくわかりにくい道路誘導員の動きのようなもの。
飼い主さんは同じようにやっているつもりです。でも、実は同じ動きにはなっていない。そういうことなのです。
ノイズが多いと伝えたいことが伝わらない
視覚情報にしても、聴覚情報にしても、ノイズが多ければ伝えたい内容を相手にうまく伝えることはできません。
私の動きにはノイズが少なく、飼い主さんの動きにはノイズが多い。
そういうことなのです。
もちろん、ノイズの少ない動きを私は飼い主さんたちにお伝えしているのですが、その動きをすぐに身につけられるわけではありません。
ノイズの少ない動きとは、無駄のない動きともいえるのですが、スポーツにしろ、楽器演奏にしろ、書道にしろ、とかく動きが伴うものは、それなりの動きが身につくまでには数カ月を要する。そういうものなのです。
同時に発している合図が、別々の合図のことも
右手は「止まれ!」とばかりに、手のひらをこちらに向けている。左手はというと「進め!」とばかりに、誘導灯を進行方向に向け何度も振っている。
さて、進むべきか、止まるべきか。
こうした混乱も飼い主さんは、犬に与えがちです。
左手ではマテの合図を出して右手および上半身ではオイデの合図を出している、言葉ではオスワリを要求し手の合図ではアイコンタクトを要求している……などなど。片方の合図にとってもう一方の合図は、伝えたい合図を阻害するもの。先に記したノイズともいえます。
さて、ご自身が犬にとってわかりやすい誘導員かどうか?
ぜひ一度、ご自身の犬に示す合図とそれに対する犬の反応、その姿を動画で確認してみてください。きっと何かしらの気づきがあるはずですから。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
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